統合型PRの実現にはデータ活用と分析が不可欠
生活者の消費はモノからコトへと言われて久しいですが、コト消費を重視する傾向は強まる一方です。商品やサービスがもたらす最終的な便益や利用シーンといった社会的・情緒的な価値を提示し「これからも愛用しよう」「友人にシェアしよう」という熱量を作ることが、PRに求められています。
さらにPRの手法も多様化しています。PESO(Paid、Earned、Shared、Owned)メディアという言葉が表すとおり、広告とPRを統合しながら多面的なコミュニケーションチャネルで情報発信する必要性が生まれています。私たちも、パブリシティだけでなく、コンテンツマーケティングや動画広告、インフルエンサーマーケティングなどを包括した統合的なコミュニケーション施策を、企業に求められることが多くなったと感じています。
「統合型PRで、社会の熱量を高める」には、一見測定しづらそうな生活者や記者、インフルエンサーの「熱量」を定量的にデータで可視化し、分析を行うことが必要不可欠です。従来の露出件数や広告換算費といった指標では不十分で、競合ブランドと比較した際の露出比率を表すシェア・オブ・ボイスや、意識変容・態度変容を測る内容分析や論調分析といった定性的な指標も組み合わせて熱量を見る必要があります。メディア間でどれだけ情報が波及したかといった情報伝播力も一つの指標になります。弊社では効果測定ツール「PR Analyzer」の開発をはじめ、統合型PRを支援する体制を整えています。ツールやソリューションの扱いやすさが進化することで、より多くの人がPRの力を活用できる“PRの民主化”が起きる日も近いと考えています。

ビルコム株式会社 代表取締役 兼 CEO 太田 滋氏
1976年生まれ。オーストリア共和国ウィーン出身。経営管理修士(MBA)。Stanford-NUS Executive Program in International Management修了。アイ・エム・ジェイ、ソースネクストを経て、2003年にビルコムを創業。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科博士課程に在籍中。著書は『WebPRのしかけ方』等多数。アドテック東京等、登壇実績多数。
「ステークホルダーとの良好な関係を作る」という発想
この数年、私は「コネクタ」と名乗っています。コネクタとは何だ? と耳慣れない言葉に戸惑う方もいるかと思いますが、やっていることは「一人パブリックリレーションズ」です。つまり、組織や事業によって必要なステークホルダーとの関係構築役のことです。私自身が広報について勉強しながら、教科書に書かれていることを一つひとつ積み重ねていった結果、たどり着いた役回りがコネクタです。
自分自身をメディアに露出させることもありますが、メディア露出以外の方法も駆使して、「とにかくステークホルダーとの良好な関係を作れたらそれで良い」という発想がベースにあります。
今後、テクノロジーの発達をはじめ、副業・パラレルワークなどの働き方の進化もともない、「個人」を媒介としたコミュニケーション手段はさらに多様化し、新しい手法も編み出されていくでしょう。そして事業主体たる組織やマーケターには、そのような「個人」をうまく使いこなす手腕が求められていきます。PRを仕掛けていくには、「個人をうまく踊らせる(個人が踊る環境を仕掛ける)」ことがカギになります。
また、PRパーソン/マーケターにとっては、個人の観点で「媒体化を目指す」重要性が高まります。これは「インフルエンサーになろう」「キラキラしよう」と言いたいわけではなく、「個人を媒体としたコミュニケーション活動」を自ら体感し、そういった個人を使いこなすという視点が重要という意味です。さらには、「いざとなったら自分も媒体として使う」くらいの気構えが必要でしょう。

“人や情報をつないで価値を創る”コネクタ
Sansanコネクタ/atWillWork理事/Public Meets Innovation理事/日本PR協会広報委員/ロックバー経営 他 日比谷 尚武氏
学生時代より、フリーランスとしてWebサイト構築・ストリーミングイベント等の企画運営に携わる。その後、NTTグループにてICカード・電子マネー・システム開発等のプロジェクトに従事。2003年、KBMJに入社。2009年よりSansanに参画し、マーケティング&広報機能の立ち上げに従事。並行して、Open Network Labの3期生(Pecoq)、PRTable創業、日本PR協会広報委員など、各種社外活動に参画。2016年12月に独立。MarkeZineで連載「マーケティング手法としてのエバンジェリストその役割と価値」を寄稿。