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Twitter×漫画で若年層へのアプローチを強化 「サランラップ」のTwitter活用が成功した理由

 1960年の発売から、来年60年の節目を迎える旭化成ホームプロダクツの「サランラップ」。若年層へのアプローチを課題としていた同ブランドは、デジタル施策への取り組みを強化している。リニューアル認知拡大を目的に行われた「#サランラップ漫画劇場 キャンペーン」では、ブランドとして初のTwitterキャンペーンであったものの、2万を超えるフォロワーとインプレッション数1億2,000万を獲得する結果を収めた。企画の経緯とTwitter活用を成功させるためのポイントを、ブランド担当者に聞いた。

ブランド課題解決に向けてTwitter活用を開始

 食品保存やレンジ加熱・調理時に大活躍の食品包装用ラップフィルム。旭化成ホームプロダクツが手がける「サランラップ」は、その名が代名詞として使われることも多く、高い市場シェアを誇るロングセラーブランドだ。

サランラップ

 長年トップシェアを走ってきた「サランラップ」だが、一方で堅実で固いイメージが付き、若年層へのアプローチ、とりわけ若年女性のブランドイメージ向上が課題となっていた。課題改善を図るため、テレビCMを中心としたコミュニケーションを継続しながらも、デジタル施策の取り組みを強化している。2016年頃からWeb動画の制作やYouTube広告の配信、LINEの活用などを行ってきた。

 そして次に着目したのが、それまで手を着けられていなかったTwitterの活用だった。その理由について、広告宣伝担当の児嶋和生氏は次のように話した。

旭化成ホームプロダクツ株式会社 マーケティング部 第一グループ 課長代理 児嶋 和生氏

 「若年層へのアプローチはもちろんですが、『サランラップ』を活用するシーンを広げていきたいという想いもありました。その際、企業側から一方的に伝えるのではなく、利用者自身が生成してくれるUGCがどんどん出てくるような場での施策の展開が合っていると思い、中でもTwitterが最適だと考えました」(児嶋氏)

商品リニューアルの認知を拡大

 2018年3月に、商品のリニューアルが実施された「サランラップ」。リニューアル最大のポイントは、発売からずっと直線型だった刃を“M字型”に改良したことだ。ブランドにとってこれは非常に大きなニュースだった。

 「『切りやすさ』は、お客様がラップを買う時に重視されるポイント。同時に商品開発担当にとって、さらなる切りやすさへの追求は取り組むべき重要課題でした」とリニューアルについて語るのは、商品開発をはじめ商品企画を担当する片山洋希氏。

旭化成ホームプロダクツ株式会社 マーケティング部 第一グループ 片山 洋希氏

 片山氏によれば、M字型の刃に変更することで、刃が当たる3点に力が集中するようになり、従来品と比べ4割ほどの軽い力でフィルムが切れるようになったという。

 そして、このリニューアルの若年層への認知拡大を図り企画されたのが、「#サランラップ漫画劇場 キャンペーン」だ。

リニューアルに興味を持ってもらうTwitter活用とは?

 「#サランラップ漫画劇場 キャンペーン」では、Twitterとの親和性が高いコンテンツである漫画を活用したアプローチを展開した。まずはフォロー&RTキャンペーンで、フォロワーから二次的、三次的に情報を広げていった。

 そして、企画の目玉となったのは、漫画『ベルサイユのばら』の作者である池田理代子先生が描き下ろすオリジナル漫画への出演権という景品だった。

 「『ベルサイユのばら』は数十年前の作品ですが、若年層にも高い知名度がある不朽の名作です。そんな作品を描かれた池田先生の作品に出られるというなかなか類を見ないインセンティブだと思います。その他にも、Twitterで人気のある漫画家にTwitterアカウント用のアイコンイラストを書いてもらえる権利や、池田先生オリジナルデザインのQUOカード5,000円分を500名など、様々な方に響くインセンティブを用意しました」(児嶋氏)

 また今回、キャンペーンに協力してくれたTwitterで人気の漫画家たちが、リニューアルの特長である「『サランラップ』がM字の刃になって切りやすい」をテーマにしたオリジナルストーリーの漫画を公開。どの漫画家も数万から20万超のフォロワーを抱えており、そこでのリニューアル認知拡大も狙った。

必要なのはおもしろみや興味を引く魅力

 協力してもらった漫画家に関しては、SNSで拡散力を持つ漫画家・イラストレーターのマネジメントを行うwwwaap(ワープ)とのスポンサーシップのもと、ターゲットとなる若年女性と親和性の高い内容を描く人たちを選び、育児や恋愛など各作家ならではの切り口で漫画を描いてもらったという。

 「マス媒体だと伝えられる情報が限られていて、M字型刃の情報を中心に発信をしていたのですが、商品開発の立場で考えると、使い始めのテープの引き出しやすさや、握りやすいパッケージの改良にもかなり労力をかけてきたこともあり、そうした内容も盛り込んで情報発信したいと考えていました。漫画家さんによっては、そうした改良点についても漫画内で触れていただけたので、読者に興味を持ってもらえる形でより深い情報の伝達ができたのではと思います」(片山氏)

 では、これらの施策を成功に導くためにどのようなことを意識していたのだろうか。児嶋氏はコンテンツにおもしろみや興味を引く魅力があるかを常に意識していたという。

 「一般の利用者に情報を拡散してもらい、多くの方に届けたいと考えていたので、人に伝えたくなるようなおもしろさが必要だと思っていました。たとえ高価なインセンティブを用意しても、企画自体が見慣れたものだと興味を引くのは難しい。その点で漫画に出られるというインセンティブはあまりなく、興味を持ってもらえるのではと考えました。Twitter漫画家のアカウントから漫画を公開してもらったのにも、広告らしくなく読み物として楽しんでもらえるのでは、という仮説がありました」(児嶋氏)

フォロワー数が2万増、利用者のツイートも増加

 3月17日から25日のキャンペーン期間中は、いくつかの広告メニューを組み合わせて拡散させていった。

 初日には、Twitter上のおすすめトレンド枠最上位に表示されるプロモトレンドを実施し、5,000万以上のインプレッションを創出。ローンチ時に大きく露出することでキャンペーンの盛り上がりを作ることができたと評価する。

 その後は先述のwwwaapとのスポンサーシップで制作した漫画を紹介するプロモツイートを実施。キャンペーンの参加者を増やすべく、カンバセーショナルカードも用いながら、1週間情報を出し続けた。

 その結果、アカウント開設からわずか10日で約2万人のフォロワーを獲得。インプレッション数は、広告で9,000万、オーガニックで3,000万の合計1億2,000万を獲得した。オーガニックのツイート量も多く、約9割がポジティブな内容で、ネガティブな反応はほとんど見られなかったという。

 「商品に対してポジティブな声が聞けたことで、我々のモチベーションアップにもつながりました。きちんと『サランラップ』利用者の評価につながって良かったです」(児嶋氏)

ビジネス成果にも大きく寄与する結果に

 また、漫画を楽しむだけでなく、実際の購買へつながったとわかるようなツイートやブランドスイッチが起きたと見えるツイートも散見された。このように、売上にもつながっていることが確認できた点も評価できると児嶋氏は話した。

 「ラップフィルムのような日用雑貨は、広告を見てすぐに買いに行こうとなるものでもない。その中で購買につながるツイートが出てきたのは、情報の伝わり方が良かったのだと思います。質の高い漫画コンテンツとTwitterを組み合わせて情報を深く伝えられたからこそ、今回のキャンペーンは成功したと考えています」(児嶋氏)

 また、児嶋氏は「想定以上のインプレッションが獲得でき、課題としていた若年層の認知度も比較的高い数値を叩き出せました」と若年層にも認知が広がったことを高く評価した。これも、テレビだけでなくTwitterを組み合わせて活用したからこそ生まれた結果と言えるだろう。

ブランド60周年に向けユニークなアカウントへと育成したい

 2020年には、ブランド60周年の節目を迎える「サランラップ」。最後に今後の展望を聞いたところ「60周年のコミュニケーションについてこれから考えていきたい」と、木村博紀氏は語る。

 「今後も拡散力のあるTwitterを使って、生活者の皆さんに情報を届けていけたらと考えています。運用については、旭化成ホームプロダクツとして立ち上げたアカウントですので、『ジップロック』やクッキングシートの『クックパー』など『サランラップ』以外の商品のコミュニケーションでも活用していきたいです」(木村氏)

旭化成ホームプロダクツ株式会社 マーケティング部 第一グループ 木村 博紀氏

 今回、Twitterアカウントをローンチするタイミングで大きな盛り上がりを作ることに成功した旭化成ホームプロダクツ。「公式アカウントが休眠状態になっている」「新たにTwitterアカウントを立ち上げて利用者にアプローチしたい」という企業は、ぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/11 11:00 https://markezine.jp/article/detail/30910