急伸するネット広告市場 スマホ利用率も着実に上昇
本題に入る前に日本のネットまわりの状況を俯瞰しておきましょう。「2018年日本の広告費」(電通)によると、2018年1年間の総広告費は、6兆5,300億円。全媒体の中で最大のテレビの広告費は、前年から1.8%減少して、1兆7,848億円で着地しました。これに対してネット広告費は、1兆7,589億円まで成長。テレビ広告費にほぼ肩を並べた状態となりました。
こうしたネット広告市場の急伸を支えるのは、スマートフォンやタブレットといった手持ち端末の利用増加に他なりません。インテージのマルチデバイス利用調査からPC・スマートフォンの世代別の利用実態を見てみます(図表1)。

これによると、全世代でスマートフォンの利用率が上昇傾向にあるのがわかります。10代から30代では、スマートフォンの利用率が9割越え。若年層では、ほぼ飽和状態までスマートフォンの普及が進みました。一方で注目したいのが、50代と60代の利用率。60代の利用率はまだ5割にも達していませんが、他の世代と比べるとその上昇率は目覚ましいものがあります。
一方PCの利用率を見ていくと、全体的に利用率は減少傾向となっていて若年層ではスマートフォンに大きく水をあけられていますが、シニア層では同程度となっています。スマートフォンが急激に普及しているとはいえ、シニア層にアプローチするには依然PCも重要なデバイスなのです。
インターネットの利用率の伸び代が大きく、人口ボリュームの大きいシニア層は今後のネット市場の拡大において、鍵となってくることは間違いありません。では、シニア層は一体どういった目的でインターネットを使用しているのでしょうか。
3大ECサイトは頻繁に利用 SNSの利用率はまだ低調
生活者の消費履歴やメディア接触状況、さらには生活意識・価値観などを様々な角度から捉えることができる、「生活者360° Viewer」のデータから、シニア層のインターネットの利用実態を紐解いてみます。今回は、インターネットを利用する60代のモニターと全体の指標を比較してみました(図表2)。

まず利用サイトを見てみると、ECサイトは全体の指標と大差ない数値をマークしています。特に多くの人に利用されているのは「楽天市場」「Amazon」「Yahoo!ショッピング」の3大ECサイト。特にシニア層は「Yahoo!ショッピング」の利用率が全体に比べ+13ptと高めに出ているのが大きな特徴です。ポータルサイトでは「Yahoo!」が利用率・利用時間ともにトップとなっており、ポータルサイトから直接アクセスしやすいといった手軽さや、以前から多くの人々に利用されていて親しみが持ちやすい、などといったことがこの世代の「Yahoo!ショッピング」の利用率を高めているのかもしれません。シニア層でもネットショッピングを使っている人は多く、今後も利用率アップが期待できそうです。
一方で、SNSの利用率を見てみると、全体と比べて格段に低いのがわかります。最も利用されているのは「LINE」です。SNSの中では唯一、利用率が50%を超えていて、家族や孫などと連絡を取る手段としてこの世代にも浸透しています。連絡ツールとしての立ち位置を不動のものにしています。「LINE」以外のSNSではよく利用されていたのは「Facebook」と「Twitter」でした。「Instagram」は利用率30%にも満たず、シニア世代においては存在感の薄さが否めません。