「ネットの口コミはあまり参考にしない」シニア層の消費意識
ここまでシニア層のインターネットの利用状況や、関心の高いトピックなどについて見てきました。では、この裏にはシニア世代のどういった価値観が隠されているのでしょうか。「生活者360° Viewer」のデータを見てみましょう(図表3)。


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これによると、人間関係の構築においては「人付き合いをあまり積極的に広げたいとは思わない」といった考えを持つ人が多いことがわかりました。また現在の友人関係については、「友達であっても、プライベートには深入りしたくない」「相手に触れて欲しくないことがあるときは、黙って見守るべきだ」というように、自分の本音を包み隠さず話し、何でも悩みを相談したいというよりは、お互いのデリケートな部分には触れず、傷つけないように気を遣って接するのが望ましいと考えているようです。インターネット上でも、新たに人間関係を広げるよりも今つながっている人たちとの関係を大切にしたいという価値観が強くなっています。
また、消費意識や価値観について見てみると、若年層とは少し異なった傾向が浮き彫りになりました。シニア層では「話題性があっても、品質の裏打ちがなければ買わない」、「ものを買うときは価格にみあう価値があるか吟味する」といった考えが強くなっていて、インターネット上で話題になっているものや口コミへの関心は低く、実際に自分で試して、より良いものを自分で選んで発見していきたいという意識が強いことがわかりました。また商品に望む要素としては、「デザインよりも機能」。わくわくするような見た目や新しい機能よりも、基本的な機能や品質がしっかりと保証されている商品を提供して欲しいという考えを持つ人が多くなっています。
人付き合いの範囲を広げようとする意識が薄く、ネットで話題になっているものや、口コミには誘導されない。そして機能性を重視し、自分のこだわりを強く持って購入を決める。この傾向を裏付けるように、スマートフォンの行動でも、SNSで影響されて商品を購入するというような傾向は低くなっていました。このような価値観が、シニア層の間でSNSの普及がなかなか進んでいかない要因の一つなのかもしれません。
また購入する商品については、「気に入った商品やサービスは長く買い続ける」という考えが強くなっていて、まだ試したことのない新しい商品をネット上で買って挑戦してみるというよりは、以前から店頭で実際に購入した経験があるものや、長年に亘り愛用し続けているものなどを、そのままネットショッピングで購入しているとも考えられます。
シニアがネットで求めるモノ
インターネットを利用するシニア層向けデジタルマーケティングで求められるものが明らかになってきました。押さえるべき点は次の3点です。
まずは「スマートフォンに特化しすぎないこと」。他の世代はスマートフォンの利用率がPCの利用率を上回っていますが、シニア層だけでは同等となっていて、PCもまだまだ大きな力を持っています。モバイル広告一辺倒にならないように注意が必要です。
次に「信頼性を高める」。シニア層は話題性よりも品質・機能を重視する傾向があり、話のネタになるような商品や新機能が付いた商品よりも、基本的な機能が充実していて、安全性が高いものに関心を示しやすくなっています。企業や商品は、彼らが望む「堅実で健康的な暮らしを支える存在」としてみなされるよう努力を重ねなければなりません。
そして最後は「リアルで手間がかかる部分のみをネットに置き換える」。最近ではSNSやレビューサイトなどで“バズって”爆発的ヒットが生まれることが多いですが、ネット上の口コミを参考にしないシニア層には適用されません。シニア層にとっては商品の買い出しや運搬などリアルで手間となる部分が便利になっているだけで十分。ネット上でも新聞のニュースサイトの利用率が高くなるなど、昔からなじみのある従来メディアなどへの接触が多いので、情報発信源もSNSを頼りにするより、従来メディアへの信頼性を活かしたアプローチのほうが効果がありそうです。
▶調査レポート
「増えるネット利用 シニア世代が今、求めるモノ」(Intage 知る gallery)