自分なりの市場観を創るために、お客様・会社から少し離れよう
――マーケティング責任者として、CXにどのような関わり方をしているでしょうか。
柿野:経費精算クラウドを提供しているコンカーですが、「経費精算をなくすこと」が、私たちが目指す究極のCXです。それは高速道路のETCのように「体験することすらできない」ものです。
先ほども紹介した、駅の改札にSuicaをタッチするだけで、利用料金の入力がConcur Expenseで完了するJR東日本との実証実験や、JapanTaxiやUberとのパートナーシップはそのための取り組みの一例になります。移動シーンの中で、経費精算が自動で完了する、そんな世界がもう実現されつつあります。コンカーとそのエコシステム全体で「経費精算がない世界」を実現していきたいと思います。

――マーケティング責任者として難しさを感じていることがあるとすれば、どういったことでしょうか。
柿野:マーケティング人材の採用・育成・定着化が大きなテーマです。マーケティングも「デジタル」「コンテンツ」「パブリック・リレーションズ(PR)」「セミナー&イベント」「製品」「パートナー」「インサイドセールス」といったように業務を分解するとわかりやすく、人材も採用しやすくなりますが、これらを市場視点で組み合わせて、マーケティングプログラムとして企画・実践ができる人材となると難易度が格段に上がります。
市場目線でコンカーを位置付け、お客様や社内の各部門における「目線の角度」を上げられるマーケティング人材は不可欠です。調査結果、データ、海外動向、競合他社、ビジネス団体、ガバメントなど、直接相対するお客様やパートナー様から逆に少し距離を置いて、冷静に中長期に時間軸をとって、自分なりの市場観を導き出す思考が大事だと思います。
市場の成熟度に合わせて組織体制をアレンジする
――組織が拡大する中、今後社内でどのような役割を担っていきたいとお考えでしょうか。
柿野:コンカーが常にリーダーとして市場で存在し続けるために、主導的な役割を担いたいです。既に日本の時価総額トップ100の半数近くのお客様にコンカーをご利用いただいていますが、中堅・中小企業へと利用の裾野を広げることが、マーケティングに課せられた大きなテーマです。既に、SAP Concur Expense Standardという成長企業向けのサービスをリリースし、人員増強も進行中で、体制は整いつつあります。
また、この領域はデジタルマーケティング基盤で勝負が決まると言っても過言ではありません。見える化や自動化はもちろんのこと、AIプロジェクトも現在進行中で、とても良い手応えを感じています。今まで培った大企業向けビジネスのノウハウをベースに全社一丸となって、中堅・中小企業市場でもコンカーをお使いいただけるように日々、努力していきたいと思います。