2018年に顕在化した、中国企業の脅威
2017年までは、日本国内において、日本の生活者がお金を投下する先は日本企業のゲームが中心でした。それまでは世界中でヒットを飛ばしていたゲームでも、日本国内で大きくシェアを伸ばすことができなかったのです。
しかし2018年は中国企業の日本展開が成功した年となり、風向きが大きく変わりました。たとえば2018年の日本国内アプリ売上TOP5には、中国のNetEase社がリリースした荒野行動が入りました。荒野行動の2017年対比の売上成長率は500倍という脅威の結果となり、特に若年層の日本の生活者に広く遊ばれることになりました。併せて2018年、日本国内のアプリダウンロード数ナンバー1だったのは中国のByteDance社の「TikTok」でした。
言い換えると、2018年は初めて「日本人が中国企業のアプリサービスに大量にお金を投じた年」であり、同時に「日本人が最も積極的に中国企業のアプリをスマホにインストールした年」でもあります。この動きを「中国企業のアプリのDL&課金が増えた」と表面的に捉えていては、多くの日本企業は中長期に渡る成長機会を失ってしまいます。この状況が示す、真の脅威は何かを紐解いていきましょう。

海外アプリの成功が、日本の既存産業へ与える真の脅威とは?
なぜ中国企業が提供している荒野行動やTikTokが日本で成功することが、日本の既存産業へ影響が及ぶのかを、紐解いていきましょう。
App Annieの統計によると、日本では1人あたり平均100個強のアプリがスマホにインストールされていますが、1ヵ月に1度以上使われるアプリは30個程度にすぎません。つまり、70個は月に1回も使われていないのです。一方で1日の時間には上限があり、日本では平均1日3時間がモバイルに費やされています。
加えて上述した通り、日本経済は大きく成長しておらず、国民1人あたりの可処分所得は増えていませんが、モバイルサービスの市場成長は二桁成長しています。つまり可処分時間は特定アプリに集中投下され、可処分所得の投下先がモバイルにシフトしている、と言えます。
そういった中で、TikTokは日本人に受け入れられ、毎日400万人以上のユーザーに利用され、1日に30分以上の時間を獲得しています。App Annieデータを見ると、TikTokアプリには50個以上のSDKが入っています。つまり、日本のユーザーはどのようなコンテンツを好み、どういうUI/UXに反応し、どの場所からアクセスしているのか、ありとあらゆる生活データを吸い上げることができているのです。
荒野行動は「初めて多くの日本の生活者が財布を開いた、中国企業が提供するゲーム」と言えます。日本人はどういうコンテンツや体験、プロモーション施策に反応して結果財布の紐が緩むのか、荒野行動を提供しているNetEase社は大量のデータを手に入れいているのです。
日本よりも遥かにデータドリブンの意思決定が進んでいる中国において、「日本攻略のベストプラクティス」は瞬く間に他の中国企業に展開されるでしょう。そして、このベストプラクティスが消費財メーカー、小売、外食、ヘルスケアといった領域の企業に広がることで何が起こりうるか、想像に難くないでしょう。
