※本記事は、2019年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』42号に掲載したものです。
差別化ではなく独自化 顧客理解に立ち返る
ロングセラーブランドの抱える課題と対策について解説する前に、ブランドとは何かについて述べておきます。ブランドにはいくつかの定義があると思いますが、私は「消費者の頭の中にある価値と記号が結びついたもの」だと考えています。ブランド側が何を訴えているかではなく、あくまで消費者がどう認識/知覚しているか、がブランドの本質です。
ブランドが成立している状態とは、色や形、あるいはテレビCMのサウンドロゴなどの「識別記号」と、多くの消費者が具体的なそのブランドを思い浮かべる「知覚価値」が結びついている状態と言えます(ブランドの議論において、知覚価値は「パーセプション」とも言われます)。
それを踏まえて何十年と維持し続けているロングセラーブランドを考えると、人気を保つためには、消費者側の変化に応じて常に微調整が必要です。また、耐久消費財より食品や飲料、日用雑貨などの一般消費財に、より多くロングセラーブランドが存在しています。
自動車などは技術進化のスピードが速く、それが購買に直結するため大きな訴求軸になりますが、一方で一般消費財はそこまで技術進化が速くなく、またそれが購買を左右することも少ないです。これらは習慣的に買うことが多く、選ぶのに時間をかけない低関与商材なので、ブランドを蓄積して想起率を高めることが購買に直結しやすいのです。もちろん、自動車のポルシェやゴルフなど、耐久消費財にもロングセラーブランドは存在しますが、基本的には低関与で習慣化した商品カテゴリーでロングセラーブランドが成立しやすいと言えます。
では、以下の4項目を順番に解説していきます。
- ロングセラーブランドが抱えやすい課題
- 1.を解決する選択肢と選択の基準
- リブランディングする際に重要な点
- 今後生き残るために必要なこと