日本のD2C事業の次のステップ
日本におけるD2C事業が、DNVB的な長期的な「ブランドとして価値」を創出する方向へ、変換できる点を2つに絞り紹介する。(1)「ファネル」発想の囲い込みカスタマージャーニーではなく、「パイプ(ストロー)」の発想で、顧客一人ひとりとの関係を「ゼロから」積み上げる。
現在の日本で知名度を獲得しているD2C事業は、「(既存)店頭ブランドのロイヤルカスタマーをオンラインに囲い込む」というファネル発想が多い。この発想では、ファネル上部でのインフルエンサーの「Paid買い」によるアプローチから始まり、ファネルの終点成果として「当たった顧客を刈り取る」コンバージョンが評価される。こうして販売拡大を期待するマス・マーケティングの再現ループが続いてしまう。
これに対してDNVBの顧客とは、既存商品のマス・マーケティング概念とはまったく違う「新人類」として捉えるほうが早い。「地球を脱出し、火星の人々とファーストパーティーの関係を構築するイメージ」としてたとえてみた。過去の地球人のデータを再利用するのではなく、新たな移住先の火星での関係やデータをイチから構築する気構えと、解釈で臨む必要がある。火星の人々に向けて、圧倒的に広がる言語を知ることが重要だ。(2)既存ビジネスの水平シナジーを期待するのではなく、「金融・決済」と「流通経路」で垂直の「パイプ」価値に変える。
DNVBが既存産業の船底に穴を開けている状況では、タイタニック号の甲板で椅子の並べ替えを行っても意味がない。日本企業が展開するD2C事業の最大の重しは、「既存事業」の生き残りのために、船底の穴と「シナジー」を期待することだ。既存事業とカニバリが発生しうる新DNVBは、同業として「水平拡大」の期待をしては矛盾が生じる。DNVBの成長投資は、あらたに「金融・決済」と「流通経路」に関して「縦」にエコシステムを築くことである。この垂直統合の方向に関しては日本企業にとっては非常に示唆が多いのが米AmazonとWalmartの経営判断である。要観察として続報をお伝えする。