スマートテレビ機器の視聴データとユーザー属性を紐付ける
MZ:データの量と質の両面で、テレビCMの効果測定とプランニングの意思決定に必要な分析が十分にできていなかったのですね。スマートテレビだと乖離がある、とはどういうことでしょうか?
関口:スマートテレビは、120万台という数値は大きいものの、ユーザーの属性が紐付いていないのです。機器ベースの分析はできても、たとえばテレビCM接触後にどのような属性のユーザーが当社Webサイトを訪れたか、最終的なコンバージョンに達したか、といったところまではわかりません。
デジタルでは、ユーザー単位で広告接触やLP遷移、コンバージョンまでがわかるので、デジタルとテレビ視聴データを統合して広告全体の効果を見るためには、テレビ視聴データ側に相応の粒度と精度が必要でした。
MZ:それで、両社で新しいパネルの開発に至ったのですね。
関口:はい。当社が求めるデータがそもそも現在日本にないとわかり、それなら数千万のユーザー情報を保有する自社プライベートDMPを使って新たにデータをつくれないかと相談したところ、インテージさんから「両社のデータを使ってスマートテレビ視聴ログから個人視聴を推定する」ことを提案いただいたんです。
MZ:具体的には、どのように展開したのでしょうか。
中村:まずインテージで扱っているスマートテレビの視聴ログと、dポイント会員情報の属性を掛け合わせて、データを機器単位から人単位へと変換しました。その上で、携帯電話の位置情報から推定した在宅有無によって視聴を判定する……という2ステップで進めました。
関口:その前提として、もちろんデータの利用・分析においては、許諾を得られているユーザーのデータを匿名化した上で使っており、個人を特定し得る情報は使っていません。個人の視聴を統計データによって推定しています。

50万ものユーザー属性が紐付くテレビ視聴パネルが完成
MZ:なるほど、まずスマートテレビにユーザー属性を紐付けたんですね。そして、在宅していてテレビが点いていたら「視聴した」とみなす、と。実際に、在宅の推定はどのようにしているのですか?
関口:位置情報の傾向から、在宅有無を推定して、ドコモのテレビCMが流れた場合に視聴の判定をする、という仕組みなんです。
スマートテレビは機器単位なので、家族数人で住んでいる場合、今までは「本当は誰が視聴していたのか」はわかりませんでした。それが今回、携帯電話の位置情報から推定した在宅有無を使うことで、ユーザー属性と視聴を対応付けて分析できるようになりました。
MZ:たとえば、家族の中であるユーザーだけが在宅しており、テレビが点いていたら、そのユーザーが視聴した……とみなすということでしょうか。
中村:そうですね。全員在宅していると推定すれば、全員が視聴したとみなすことにしました。あくまで推定ですが、i-SSPでの分析と比べても傾向に乖離が少ないので、精度もかなり高いと捉えています。
MZ:そうして開発した新たなパネルのサンプルサイズは、どのくらいになったのですか。
関口:約50万になりました。ドコモの数千万規模の顧客基盤と、スマートテレビ120万台を掛け合わせて、ユーザー属性が対応した一定規模の視聴データを作ることができました。当然、もっと桁数があればそれだけ精緻に分析できるわけですが、以前は質にこだわると数千の単位だったので、2桁増やせたのは大きな成果です。