サブスク・ビジネス拡大の背景にあるシェアリングエコノミー
米国におけるサブスクリプション経済急成長の背景には、インターネットを介して物品やサービスの貸し借り・販売・交換を行うシェアリングエコノミーの台頭がある。これにより、“個人による恒久的な所有”の概念は、徐々に薄まってきている。また中間層や低所得層における所得の伸び率が低迷していることもあり、毎回の課金が少額であるサービス・商品に対する生活者の需要は増している。さらに、こうした生活者の変化から、企業側も“長期安定の収益源”を確保する必要性が出てきているのだ。

サブスク成功企業に見られる3つの特徴
サブスクリプション・ビジネスで大きな成功を収めているサービスは、「疲れない・飽きない・お手頃感がある」という3つの特徴を持つものが多い。たとえば米マイクロソフトのオフィススイートであるOffice365は、「比較的高額な買い切り制で、サポート終了まで数年間使用できる」という従来のビジネスモデルから、「10ドル以下の手ごろな月額課金で、半永久的に最新の機能が使える」というモデルに転換し、売上を伸ばした。
また動画ストリーミングサービスを提供している米Netflixは、「ベーシック視聴プランが月額10ドル以下で、高画質で4台のデバイスの視聴ができるプレミアム視聴プランでも、およそ15ドルでクオリティーが高いオリジナルコンテンツが楽しめる」という革新的なサービスモデルでユーザーを拡大した。
相次ぐBtoCサブスク市場への新規参入
また近年、BtoCサブスクリプション市場に新規参入が相次いでいる。ユーザーと直接取引することで中間マージンを省いた、D2Cサービスが多いことが特徴だ。たとえば、米金融サービス大手のチャールズ・シュワブでは、300ドルの「頭金」を支払えば、月額30ドルでプロの投資アドバイザーからファイナンシャルプランニングの助言を受け放題の「インテリジェント・ポートフォリオ・プレミアム(Schwab Intelligent Portfolio)」というサービスを開始した。従来は最低2万5,000ドル以上の資産を対象に、数回のアドバイスで資産額の1%のフィーを課していたので、お得感が前面に打ち出されている。
また、ポッドキャストのスタートアップである米ルミナリーは、「ポッドキャスト業界のNetflix」を謳い文句に、月額8ドルで著名トークショーホストのトレバー・ノア、女優で作家のレナ・ダナム、コメディアンのラッセル・ブランドなど錚々たるセレブをフィーチャーしたコンテンツ力の高い独自番組をはじめ、ビジネスやマネー、ニュースなどの番組をミックスして提供している。米ポッドキャスト聴取者の数は月間9,000万人に上るため、現在は「無料」のイメージが強いポッドキャストでも、有力コンテンツで勝負できるとしている。
「空の回数券」を販売する米ワンダーリフトでは、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空など米大手キャリアから格安で仕入れた国内片道航空券を3回分369ドル、4回分を459ドルで毎月販売するサブスクリプションサービスを開始。出発日3週間前から前日まで、専用アプリで利用したい日時を指定して予約をする仕組みで、独自アルゴリズムによって96%の確率で希望の便の座席が確保できるという。
格安レンタカー大手の米エンタープライズは、車を所有せず、使いたいときだけお金を払って利用するモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)に参入した。この分野には米フォードなど大手自動車メーカーや米Uberなどの配車大手が既に参入しているため、激戦区となることが予想される。差別化の決め手は、セダンからSUVに至るまで多様なメーカーの多様な車種を保有するレンタカー会社ならではのMaaS体験だ。ユーザーは、初期登録料250ドルを支払えば、月額1,500ドルで乗り放題で、月4回まで気軽に好きなクルマに乗り換えられる。料金には自賠責保険、メンテナンス、ロードアシスタンス、衛星ラジオの「サイラス」利用料などが含まれている。ネバダやミネソタなど数州からスタートして、他州へ展開していく予定だ。
こうしたなか、小売大手の米ウォルマートは、子供・幼児服のサブスクリプションボックスを月額48ドルで立ち上げた。ウリは、子育て世代に人気の子供服サブスクリプションボックスを展開する米キッドボックスのブランド性に富んだアパレルが4〜5着入っており、市価の半額であること。「低所得層向けの安物を売る店」というイメージから脱却したいウォルマートと、事業を拡大したいキッドボックスの思惑が一致し実現したサービスだ。ネット小売の巨人である米Amazonに対抗すべく、ウォルマートのサイトで提供されている。