AIカメラを導入し「店頭の行動データ」を可視化
仲里:最近、「リテールテック」がキーワードとなっていますよね。三陽商会では、店舗のDXはどのように進められているのでしょうか。
花輪:店舗の売上を左右する要因は様々です。品揃えや接客が大事だということは、誰しもがわかっていること。しかし、実際に店舗で起きている課題については具体化できていませんでした。そこで店舗の課題が何なのかを理解するためにAIカメラを導入し、まずは店頭での顧客の行動データを可視化するところから着手しました。
たとえば、お客様が困っていることに店員が気づけずにお客様が離れてしまったり、そもそも売れ筋商品の配置場所が悪かったりなど、実データをもとに機会損失のポイントを把握することができるようになりました。

安藤:AIカメラは、昨年の秋から一部の店舗でテスト導入をしています。お客様の来店数、滞在時間、商品を手に取った/戻した、商品を何秒間見ていたのか……等のちょっとした行動もすべて認識し、データ化されます。
なお、このようなツールを店舗へ導入する際は、押し付けにならないように心掛けています。現場と併走し、スタッフがきちんと背景を理解して、これらのツールを使って実際の改善に役立てていただかないと、本当の意味での成果は出ないと思っているからです。
世界のファッショントレンドをAIで抽出/物流も自動化へ
仲里:オフラインのデータも可視化できるようになれば、接客やオンライン上の施策にも活かしていけるようになりますよね。その他のシステム的な部分ではいかがでしょうか。

安藤:世界のファッショントレンドを数百万単位の画像から分析し、独自の切り口でトレンド傾向を予測できるAIツールを導入しています。その予測データと、弊社側で企画している内容にどれぐらい乖離があるのかを比較し、実際に生産数を調整したり、カラーを追加したりと、色々なチューニングを行っています。今年の秋シーズンから、チューニング結果が反映された商品が出てくる予定です。
花輪:これはまだ検証段階なのですが、AIを利用した検品など物流領域での自動化も進めたいと考えています。検品を100%AIに任せるのはまだ現実的ではありませんが、作業効率の改善には確実に寄与できるはずです。