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テレビの価値をいかに可視化していくか 個人視聴率へ全面移行した日本テレビの歩み

テレビの価値を可視化するには?

――具体的なデータを計測するということで、今まさにテレビ業界やサードパーティがそこに取り組んでいると思います。定期誌『MarkeZine』第41号の特集「テレビマーケティング最前線」でも、どういう視聴データが取得され始めているのかを解説しています。そもそもになりますが、テレビ自体の価値はどこにあるとお考えでしょうか。

高谷:テレビは受動的に視聴できる点が強みです。また、報道機関である信頼性が重要で、全国にネットワークがあり取材が可能な体制が整っています。そのため日本中、あるいは世界中でも、何か起こればリアルタイムで現地取材の正しい情報を届けられます。ニュースやスポーツ中継だけでなく、マスに対して同時にムーブメントを届けられることはテレビの大きな価値だと言えます。

小霜:信頼性といいますか、企業が本気度を示す時にもテレビが利用されるようになってきました。これまで、あるいは今も一部はそうですが、企業が新製品を出したり新しい取り組みを行ったりする時、その本気度を示すために新聞広告を使うのが常識化していました。それは新聞が持っているある種の正義性やシリアス性が、自分たちの取り組みが遊び半分ではないことを担保してくれたからです。それを今、テレビCMに求めるようになってきていると感じます。

 一方で、ウェブにはその力はまだありません。フェイクニュースやアドフラウドなどの問題が山積していて、ウェブ広告には信頼性に欠けるイメージがあります。本気でやるならテレビCM、という広告主の気分が生まれてきていますね。

――そうしたテレビの価値を可視化するにはどうすればいいでしょうか。

高谷:日本テレビはまさにその可視化に注力したいと思っています。生活者や広告主に価値を正しく伝えることが重要なミッションです。先ほどテレビは受動的に視聴されると言いましたが、それは商品の購買に至る前の認知や興味を促す役割を担えるということです。

 ただ、テレビCMを観た人がそれに影響されて買い物に行くことがあっても、データとしては見えてきません。企業のブランディングに寄与していたとしても、データとして可視化しなければ説得力に欠けます。テレビCMを観た人が行動したことをどうやって証明するか、この課題に取り組みたいと思っています。

小霜:間接的には証明できてきています。テレビとウェブを融合してフルファネルのキャンペーンを組み立てる時、難しいのが各メディアへの予算配分です。適切な予算配分を行うには、テレビやウェブ以外のメディアについても、たとえばチラシが態度変容にどれくらい寄与しているのかなども可視化する必要があります。

 そこで有効なのが統計学的な分析です。各メディアと貢献度の相関関係を緻密に見ていくことで、最適な予算配分が可能になります。テレビも含めて分析できるので、テレビがどれくらい認知や態度変容に貢献しているかがわかるんですね。

――今のお話をうかがうと、やはりテレビはウェブに比べてデータが少ないように感じます。今後、まだ見えていないデータが可視化されてくるのでしょうか。

高谷:日本テレビではTVerなども使って、テレビ局で分析できる視聴データを集めています。来年から視聴率調査のサンプルも増える予定なので、全国の個人視聴率がより詳細にわかるようになります。さらに配信の視聴ログなどで、放送と配信を含めたコンテンツ全体の視聴者分析に取り組み、そこにサードパーティの行動データを、どう紐づけていくかを検討しています。まもなくテレビ視聴者の動向が詳しくわかるデータも揃ってくるでしょうね。

視聴者も広告主も満足できるテレビのあり方とは

――価値の可視化が進むとテレビCMの活用方法も変わってきます。小霜さんがお話しされていたように、テレビとウェブを組み合わせることが一般的になるかもしれません。そこで最後に、視聴者も広告主も満足できるテレビのあり方についてうかがえればと思います。

小霜:やはりテレビもいろんなメディアの1つだというところからスタートすべきです。ウェブと比べて役割が異なりますので、それぞれの特性を理解して使い分けることです。地方ではテレビCMを使い、都市圏ではTrueViewがテレビ代わりになるという考え方も出てきています。

 というのは、地方のテレビCMは都市圏と比べてはるかに安いからですね。SNSはリーチは弱いがエンゲージに強く、TrueViewはテレビとの中間って感じなので。ウェブメディアも特性の違いがはっきりしてきています。

 ただ、それでもリーチ力はテレビのほうが上で、肌感だとテレビとウェブで7対3くらいでしょうか。一方、態度変容はウェブが強くて、自分の直近の事例ではテレビCMだけ観た人は1%強、テレビとウェブと両方接触した人は14%に跳ね上がりました。全体的なメディア戦略を設計する時、どちらかだけでは足りないということです。もちろん、同じCMをテレビとウェブで流せばいいという簡単な話ではありませんが。

 商材や予算、ターゲットによって適切な予算配分は異なります。最適解をいろいろな角度から考えて設計することが重要です。それが視聴者と広告主、双方の満足につながると思います。

高谷:コンテンツ制作に関しては、もはや地上波のみを前提に制作すればいい時代ではありません。しかし、作り手のリソースは従来と変わらないので、作ったものをどのような形で観てもらうかという創意工夫が必要でしょう。日本テレビとしては、現状でも進めていますが、いろんなプラットフォームで視聴できるようにしていきたい。これまでの2次利用・3次利用という考えではなく、内外の多様なプラットフォームで同時に有機的に展開し、コンテンツ自体の視聴者を増やしていく。そうすると地上波の視聴者が増え、その結果2次利用や3次利用のビジネス拡大にもつながっていきます。

 社内では視聴率毀損の議論が起きましたが、結局はウェブ配信で観られるとリアルタイムの視聴率にも返ってくるんです。そういうデータが既にあります。より多くの人の目に触れるようにする、これが一番なんですね。

 テクノロジーの発展で、地上波のテレビCMもターゲティングできるようになるかもしれません。あるいは、スポーツ中継なども従来的な放送だけでなく、リッチな視聴体験が提供できると思います。コンテンツには多様な可能性があるので、どうすれば多くの人に観てもらえるのかを研究していきたいですね。

 それは視聴者にとっての満足度を高めることに他なりませんし、そうなればテレビCMの価値が上がるので広告主にとっても望ましいことのはずです。まず満足してもらえるコンテンツを作って広く届ける、それに尽きます。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

翔泳社所属。翔泳社から刊行した本の紹介記事などを執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/08/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/31641

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