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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

自分の中の“おもしろい”を信じたクリエイティブを

コンテンツは「粋」か「おもしろい」かで考える

――やるべき理由をロジカルに考えておくということですね。

 すごくやってみたいモチーフがあったとします。たとえば、「どん兵衛ゼミナール」というプロモーション施策は、僕が昔から大好きだった漫画のおもしろさを企画に活かしたいと思って作りました。シナリオがおもしろければ、たとえ主人公が学生からどん兵衛に変わってもその作品はおもしろいし成立する。コンテンツファーストでいることが重要です。

「どん兵衛ゼミナール」
「どん兵衛ゼミナール」

 一方で、ブランド的にこういったひねりを入れた企画を行うのが難しいケースもあると思います。その際の話題化の切り口として有効なのが「粋」です。たとえば、ある老舗のお菓子屋が、首都圏に直営店を出店することになった際に出稿した新聞広告。東京の新聞と地元の新聞ではそれぞれ違ったコピーだったのです。

 そこには、首都圏に進出するけど看板商品ではなく別の商品で勝負しにいき、心は地元にあるということを地元の方たちに伝えると同時に、首都圏の人たちにはこれからよろしくお願いしますという挨拶の意味が込められていてすごく粋だと思いました。こういった広告はSNSでも話題になるので、新聞広告で得られるリーチ以上の広がりがあると思います。

 このように、その商品にしか言えないことや文脈を探すことも重要です。僕自身、企画の種を様々な切り口で探すようにしています。SNSで流行っているものに変換できないか、自分がおもしろいと思っているコンテンツに変換できないか、ブランドが持っているおもしろさや素敵な個性は何かなど、あらゆる形でアンテナを張っています。

それ本当におもしろい? シビアな判断軸を持つ

――今まで自身が取り組んできた案件で、一番手応えを感じたものはなんでしょうか。

 どん兵衛のデジタル広告施策を担当することになって初めての施策が一番印象に残っています。国民的漫画の『ベルサイユのばら(ベルばら)』とコラボすることに決まったから、それを種にどん兵衛の素晴らしさをベルばらで表現してくださいとのクライアントからの依頼だったのですが、すごく難しいお題でした。

 双方にシナジーというか関係性があまりない上に、「ベルばら」は過去にも多くの商品とコラボしている人気コンテンツなので新しさというフックも機能しにくい。僕も気合を入れていろいろ提案したんですが、その度に「もっとおもしろくしてほしい」と言われることを繰り返していたら、もはや何がおもしろいかがわからない状態になっていたんです。

 あまりに企画が通らなくて悩んでいた僕は、その通らない過程を、事実とフィクションを交えながらブログのようなコンテンツにしてみたんです。すると、日清食品の担当者の方たちも「おもしろいです!」と言ってくれて、結果的に「なぜこうなった? どん兵衛ベルばらコラボ奮闘記」という広告会社の若手プランナーの奮闘日記企画にまとまりました。

 企業がやる施策としてはチャレンジングだったのですが、すごい話題になってTwitterでの企画のエゴサーチが追い付かない状態になりました。そのときは非常に嬉しかったですね。

――デジタル上で話題になるクリエイティブを作るために、必要なことはなんだと思いますか。

 デジタルの場合シビアにリーチ数が見えるので、おもしろいかどうかの判断軸は相当厳しくしています。地元の友達に冗談を言うのとはわけが違います。関西から関東に上京してきて、クラスで一発目にボケるときぐらいの緊張感を持っていないと。

 また話題になっているツイートに対しても、「何がおもしろいんだろう」と分析する感覚も大事にしていますし、仕事のアイデアになりそうなものはスクリーンショットもして貯めているのですが、浅はかな気持ちでオマージュするのは良くないです。

 SNSで話題になっている文脈を簡単にトレースすることはできるのですが、それを中途半端にしても話題にならないばかりか広告が後追いのものとして認識されてしまう。一切新しいことをしていないことになるので、文化も作れないし評価もされないことを心に留めて仕事をしています。

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二度と誰も真似できない企画を

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/08/06 16:40 https://markezine.jp/article/detail/31829

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