パッケージ開発に活用 VR/ARとの合わせ技も
日本ではこれまでのところ、事業会社とマーケティング支援会社やリサーチ会社がタッグを組んでニューロマーケティングを実践しているケースが多い。ここからは、具体的な活用例を2つ紹介する。
パッケージ開発に活用
アサヒビールは、2019年4月に発売した缶チューハイ「アサヒもぎたて」の新パッケージ開発の際に、マクロミルなどの支援によりニューロリサーチを実施した(マクロミル プレスリリースを参照)。
同調査ではアイトラッキングにより、パッケージ上で視線が追っている場所を特定したほか、脳波測定を通じて、パッケージのどの部分を見た時にどの程度魅力を感じているかを計測。調査対象者の無意識の反応スコアが最も高かったデザインを採用した。
VR/ARとの併用も
脳波とVR/ARを掛け合わせたマーケティング活用の例も存在する。日本航空は2019年3月、SOOTHと視覚や聴覚、嗅覚などを刺激してハワイのバーチャルツアーを体験できるコンテンツ「JAL xR Traveler」を開発。合わせて体験者の脳波反応をリアルタイムで可視化するアプリ「JAL Neuro Chart」の開発制作を行った(SOOTH プレスリリースを参照)。
体験者たちはバーチャルツアーとアプリを通じて、ハワイ体験を無意識の領域でどう感じたのかを確かめることができる。近い将来、こうしたソリューションを通じて旅行先との相性を事前に把握してから決める、という習慣も生まれるかもしれない。
最後に、ニューロマーケティングの今後の展望についてうかがった。大倉教授は、今後はより多くの企業が、それぞれの目的に合わせて生体信号の計測結果を活かしていくとみている一方、正しい理解の下で活用していく重要性を強調している。
「企業の考え方そのものが、客観的なエビデンスに基づいてマーケティングを行うという方向にシフトし、経営層が調査リサーチの重要性をより強く認識するようにもなっています。このようにニューロマーケティングの重要性が高まっている状況だからこそ、根拠の曖昧な言説に注意してもらいたいですし、調査の限界や今後の可能性についても理解が進んでいくよう、期待しています」(大倉教授)