生活者マーケティング実現に必要なこととは?
では、情報ソースが多様化し、生活者に情報を届けることが難しい現在、企業が実行すべき生活者マーケティングとはどのようなものなのか。
村岡氏は「今、生活者に影響を与えているのは(その消費者にとって)身近な情報です。それの最たるものが『UGC(User Generated Contents)』。生活者のUGCに対する信頼度は高く、商品購入の決定に、重要な役割を果たしています」と指摘する。
UGCとは、インターネット上でユーザーが制作・生成し、投稿したコンテンツを指す。InstagramやTwitter、FacebookといったSNSに投稿された書き込み(コンテンツ)のほか、ポータルサイトや口コミサイトに投稿した内容、商品レビューなどもUGCに包含される。
村岡氏は、UGCのように生活者の目線に近いコンテンツをマーケティングに取り入れる重要性を、これまでのマーケティングと比較して解説した。
「従来のマーケティングは、完成版の商品や施策を起点としており、なるべく多くの人にリーチすることが目的でした。しかし、こうしたマーケティング手法は、勝率が確率論で先行投資が大きく、失敗した際のリスクが大きい。そもそも、生活者は(企業から一方的に提供される)広告を信じておらず、企業からの独りよがりのメッセージは届きません。それよりも生活者の体験や声を起点に、生活者のライフスタイルや感性に合致したマーケティング施策を実行することが生活者に響きます」
生活者目線のマーケティングPDCAの秘訣
生活者のライフスタイルや感性に合致したマーケティング施策とは、生活者が求めている製品や売り場、メッセージを把握し、生活者(購入者)が情報を発信したくなる環境を構築することだ。生活者が能動的にプロモーションに参画したくなる製品や売り場を作り、生活者を軸としたマーケティングのP(Plan)D(Do)C(Check)A(Action)を回す。
具体的には、生活者(ユーザー)と直接つながれる環境を構築し、商品や施策に対する直接的なフィードバックを得られる関係を作る。その上で、SNSを通じて生活者(ユーザー)にマーケティングに参画してもらう。これにより、生活者の発信を活用し、PRや販売促進の効果向上を狙えるというわけだ。
ただし、こうした施策を実施するには様々な課題もある。まずは、生活者との関係構築だ。そもそも多くの企業は、顧客との直接的な接点を持っていない。顧客データを持っていたとしても、既存の手法で収集した顧客データからは、顧客の心理や具体的な嗜好性、ライフスタイルなどを読み解くことは難しい。さらに、これまで実施したリサーチ結果のデータを、マーケティング施策に活用できている企業は少数派だ。