集客+送客コンテンツページのKPIを因数分解で設定
そんな「楽天市場」の「コンテンツ」は店舗ページや商品ページだけではない。吉原氏によると年間数千単位のイベントを開催しており、それにともなって様々なコンテンツを作っているという。
たとえば、楽天カードの利用でポイントがアップする「毎月5と0のつく日」の告知や、母の日・クリスマスといった季節イベントにまつわる読み物コンテンツ、「楽天市場」で購入できる様々な商品を特定のテーマの下で紹介するキュレーションコンテンツ「ソレドコ」がある。これら多彩なコンテンツを作るため編成部では、コンテンツカレンダーを作り、年間特集ページのスケジュールを組むことで対応しているそうだ。

「ソレドコ」や自分の好きな商品を集めて公開できるショッピングSNS「ROOM」などのコンテンツの役割の一つは、検索流入やネットで話題になることによる新規ユーザーの「集客」だ。こうしたコンテンツを経由して「楽天市場」に来たユーザーを、今度はセールや楽天スーパーポイントアッププログラムの告知コンテンツで「送客」している。

これらのコンテンツを日々改善するために吉原氏が取り組んできたのが、コンテンツごとのKPI設計だ。楽天では、「物事を徹底的に因数分解し、実現可能な大きさの目標を設定する」という行動習慣を大切にしているため、売上(流通額)を分解して、コンテンツの役割に応じて見るべきKPIの一つとして定めているという。
ECサイト売上の公式と因数分解例
そもそもECサイトにおける売上(流通額)は、「サイトを訪問したアクセス人数」 × 「転換率(コンバージョン率)」 × 「一人当たりの売上単価」で算出できる。
この式の要素をさらに因数分解すると、たとえばアクセス人数であれば、「新規ユーザーなのか、既存ユーザーであればログイン状態なのか非ログイン状態なのか」というユーザー情報、「バナーやトップページなど、どのコンテンツを経由して来たのか」という行動情報、それに個々人の嗜好やポテンシャルの可能性をAIで探る予測情報などがある。

これら情報の中から、各コンテンツの役割に応じてKPIを定めるわけだが、たとえばユーザー行動のKPIであれば、コンテンツのPVや訪問回数、店舗への送客率などをKPIとして設定し、各担当者がどこの領域のどのKPIを追っているかを明確にして、業務に当たっているそうだ。