三ツ矢サイダーで行った、施策と売り上げを紐づける施策とは?
そして、二つ目の事例が、Twitterを使った「三ツ矢サイダー」の販促キャンペーンである。アサヒ飲料では、2015年から毎年3月28日を「三ツ矢の日」と定め、春のキャンペーンを展開している。2019年のキャンペーンでは、テレビ広告の他、パッケージに桜ラベルを採用。3月28日の当日には、連動企画として店頭での試飲会を大々的に実施し、休眠層の掘り起こしを狙うキャンペーンを展開した。
加えて、今回のキャンペーンではTwitterのハッシュタグを使い、商品購入への貢献分析を試みたという。その目的はTwitterの拡散力を使い、「三ツ矢の日」の認知を高め、売り上げ拡大につなげることであった。そのために同社は、施策を「事前の話題化」「三ツ矢の日の認知最大化」「新商品のプロモーション」という三つのフェーズに分け、3月28日に向けて話題の波を作る連続的な施策を展開した。

具体的には、全体を通して共通のハッシュタグ「#3月28日は三ツ矢の日」を用意。さらに、事前の話題化に関する施策では「#三ツ矢の矢羽根をつくってみた」、三ツ矢の日の認知最大化を目的にした施策では「#三ツ矢からのありがとう」、新商品のプロモーション施策では「#大人は甘くねーどレモネード」とフェーズごとにハッシュタグを追加した。これにより、キャンペーンに接触した人が実際にどんな購買行動を取ったかを検証することにした。
その結果、「三ツ矢の日」への接触者は2018年比で25%増、接触者からの売り上げは同比で36%増となった。他のキャンペーンも同時並行で展開したことで、全体の売り上げ寄与率は2018年の22.9%から2019年の23.2%へと推移し「Twitterのキャンペーンで接触者を増やせば、売り上げ拡大につながるのではないかという示唆を得た」と高橋氏は手応えを感じている。
さらに、4月2日に新商品「三ツ矢レモネード」を発売したところ、「三ツ矢の日」キャンペーンの接触者およびそれを話題にした人たちの購入意欲を促す効果があったことも収穫であった。
ブランディングを大事にしながら売り上げ貢献も
アサヒ飲料では広告のデジタルシフトに本格的に取り組むにあたり、マスとデジタル共通のレビュー指標も作った。知りたいのは、どれだけ多くの人にリーチできたか。そしてどれだけ深く心を動かす(態度変容)ことができたかだ。高橋氏は測定可能かどうかがわかるよう、表を作って整理し、調査体系を整備したと話す。
このように、2017年から着々と統合マーケティングに取り組んできたアサヒ飲料だが、「まだやるべきことは多い」と高橋氏は語る。現在、特に問題視しているのは、縦割りの組織構造である。現在の宣伝部は、マーケティング本部の下にあり、クリエイティブグループ、メディアグループ、デザイングループで構成されている。
先に紹介した事例も、ウィルキンソンのデジタル動画広告はクリエイティブグループが、三ツ矢の日のTwitterキャンペーンは高橋氏が率いるメディアグループが手掛けた。「ブランドの視点とメディアの連携強化がこれからの課題だと思う」と高橋氏は組織横断的な取り組みの重要性を示した。
加えて、今後のテーマとして以下の4点を挙げた。
・ターゲット×メディアの選定
テレビも含めた最適なメディアミックスの展開と、最適なメディアを選択できる目利き力の強化
・広告の売り上げ貢献の可視化
プライベートDMPの構築と活用によるマーケティングミックスモデリングへの挑戦
・デジタルマーケティング
データ活用によるマーケティングの高度化
・ブランディング
ロングセラーブランドの価値の向上
その中でも最後のブランディングに関しては、高橋氏が今後最も大切にしたいテーマだという。高橋氏は、今後も長期的に売り上げを増やしていくブランディング施策を展開し、経営陣から広告宣伝費を経費ではなく「投資」として捉えてもらえる環境の整備を目指すとした。