データの質を高め「顧客の輪郭」をはっきりさせる
未来のプライベートDMPの展望について簡単に触れたいと思います。現在のJTBのプライベートDMPは、V.3.0とV.4.0の間にあります。V.4.0のテーマは、「内部データの拡充」です。店舗データ、これまで統合されていなかったJTBグループのオーディエンスデータ、そしてアトリビューションデータが加わる予定です。
全国に800ヵ所以上ある店舗データは膨大です。さらにオンライン購入とは違う購買傾向があります。昨今の店舗離れから一転し、若年層が店舗に戻ってきているという現象もあり、店舗データとオンラインデータの統合が、新しい顧客像を見せてくれることに期待しています。また、JTBは2018年に一部のグループ統合がされましたが、現在まだ170社のグループがあり、中長期的に段階を経ながらグループ内のデータ統合を行います。ここにもデータドリブンを、オンライン事業が先導する動きを垣間見ることができます。
これらの動きは、“データの質を高める”動きです。いわば顧客像の輪郭をよりはっきりさせるためのものになりますが、データは保持しているだけでは役に立ちません。まさに輪郭を見る=データを解釈するノウハウが必要になるのです。
走らせながら構築し続ける
JTBは、オンラインの顧客データ統合基盤の下地がまったくなかったところから、ハイスピードでプライベートDMPの構築をしてきました。本稿ではJTBのプライベートDMP構築の段階的な変遷を見てきましたが、ポイントは以下の3点です。
- 単体のツールではなく、エコシステム全体を考える
- 施策と分析から逆算して全体設計をする
- 走らせながら構築し続ける
施策から逆算することで、必要なデータにプライオリティをつけることが可能になり、効率的なプライベートDMP開発が可能になります。それにより本来の目的であるコミュニケーション施策の実行を、短期間で開始することができるのです。また現時点の完成度は、全体の構想における30%程度と見ています。まさに走らせながら構築し続けていると言えるでしょう。
次回は、施策のシナリオを作るための「顧客分析」についてお話しします。顧客の特徴を捉え、コンテクストを読み解く分析手法について解説していきます。
