エリアによるテレビ視聴傾向の違い
「既婚子供あり女性」と「洗濯用洗剤ヘビーユーザー」のテレビ視聴傾向比較の結果から、デモグラフィック属性の括りではなく、商品カテゴリ購入者という括りでテレビ視聴傾向をみていくことでより的確なターゲティングができることがわかったが、それ以外に枠選定に大きな影響を与える要素として「エリア」が挙げられる。
図表2ではともに関東エリアにおけるテレビ視聴傾向の比較を行ったが、他のエリアの場合どのような違いがみられるだろうか。「洗濯用洗剤ヘビーユーザー」について、関東と関西のテレビ視聴傾向を比較した結果が図表3である。

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関東エリアにおいては平日の日中が含有率の高い時間帯となっていたが、関西エリアでは早朝帯および夜帯の含有率が高くなっていることがわかる。各セグメントにおける職業構成比を見てみると関西のほうが会社員の比率が比較的高く、そうした要因から平日昼帯の含有率が低くなっていると考えられる。こうした層にアプローチするためにはデジタル広告や屋外広告を併せて活用することも効果的かもしれない。
ここではエリアにフォーカスしたが、それ以外にも出稿する時期や放送局によってもテレビ視聴傾向は変わってくる。最適な広告出稿枠を見誤らないために、広告主にはなるべく出稿する際の状況に合わせてデータをみていくことが求められる。
CMバイイングの課題と今後
本稿ではデモグラフィック属性に依存しない、特定サービス利用者ないしは特定商品カテゴリ購入者起点でのターゲティングの重要性について説いてきた。購入ポテンシャル層をダイレクトにターゲットとして設定できるのであれば、プランニングのための事前情報としてターゲットのプロファイリングを行う手間も省ける。
また今回ターゲット含有率という指標でCM出稿枠の評価を行ったが、実際は枠ごとの出稿コストも併せて評価を行うことで、費用対効果を考慮した、より的確な出稿枠を導き出すことができるだろう。
本稿では主に広告主の視点で効率的な枠選定について論じてきたが、広告枠を販売するテレビ局側にとってもこうした考え方は有益となり得る。従来の世帯視聴率という尺度でみればあまり価値の高くなかった枠も、ターゲット含有率という別の尺度でみれば特定の広告主にとって価値の高い枠として積極的に売り出すことができるかもしれない。
一方で現行のスポットCMにおける買い付けの構造上、効率的なCM枠が判明してもその通りにバイイングできるわけではないというのも事実である。番組単位でピンポイントに出稿できるタイムCMについても出稿期間の縛りや出稿できる枠の数に限りがあるなど様々な制約がある。
日本におけるCMのプログラマティックバイイングの仕組みはまだまだ発展途上ではあるが、一部のキー局で提供が始まっている、一定の販売枠の中で広告主が1本単位でCM枠を買い付けることができるような仕組みをうまく活用することで、よりフレキシブルなバイイングを行うことができるだろう。ターゲットの「穴場枠」を獲得するにはこうした仕組みが広がっていくことが不可欠である。日本におけるCM枠買い付けの仕組みについても今後の動向を注視していきたい。