サブスクのリターンは遅めにやってくる
続いて、澤田さんはメチャカリが黒字化するまでの道のりを話してくれた。最も重視していたのは、ユーザーにレンタルを習慣にしてもらうことだったという。繰り返すように洋服を借りたことのある人は少なく、プロダクト販売モデルからレンタルへとパラダイムシフトを起こさなければならなかった。既成概念を崩せなければ、撤退することになる。これは他の新規サービスにも言えることだ。
多くの企業がサブスク・ビジネスに注目しており、実際に参入した企業も少なくない。だが、うまくいかず撤退する企業もあとを絶たない。澤田さんによると、それには大きく2つの理由がある。1つは会員数が少なすぎること。サブスク・ビジネスはプロダクト販売モデルより低価格のことが多く、そのために多くの会員を獲得しなければ事業が回らない。だからこそ、もし会員が1万人いれば黒字化するとわかっているなら、多少の先行投資をして会員を獲得すべきなのだ。
もう1つの理由は、利益が出るまで待てないこと。サブスク・ビジネスでは投資のリターンがかなり先になるのだ。メチャカリがマス広告を実施した際も、そのリターンは翌年以降に反映されていたという。もし経営陣が「投資したらすぐにリターンがある」「半年以内に結果を出す」といった認識でいると、サブスク・ビジネスは撤退せざるをえない。いかに信じて待てるか、これが肝である。
いずれにせよ、サブスク・ビジネスは先行投資型で成果は数年単位で見なければならない。メチャカリも初年度は大赤字で、一般的な経営者ならとても許容できないくらいだったそうだが、同社の場合は社長と一緒にビジネスモデルを作ったことで「継続できるという安心感があった」と澤田さんは明かしてくれた。

始めるなら価格が決め手
最後に、澤田さんよりこれからサブスク・ビジネスを始めたい企業に向けたアドバイスをいただいた。澤田さんはなにより価格(プライシング)が重要だと話す。メチャカリは月額5,800円にしないと事業が成立しなかったという。薄利でよかったとしても、その価格が企業都合であるとユーザーには高いと受け止められてしまうこともある。必要なのは、ユーザー目線の価格設定だ。
その例として、スタディサプリが挙げられた。月額5,000円でも子供を学習塾に通わせるより安価だが、ユーザーは増えなかった。しかし、980円にした途端に会員が急増。増えた会員数をもとにマネタイズを考えることができるようになった。澤田さんはこれを教訓に、収益化はあとで考えて、まずはユーザーに受け入れられる価格に設定すべきだと強調した。いいサービスであれば、あとから値上げしても受け入れてもらいやすい、と。
また、社内向けには事業計画の説明も重要だ。初年度ではまず赤字なので、3年から4年ほど継続して初めて黒字化することを経営陣に納得してもらわなければならない。澤田さんはそれを社長と一緒に取り組むことで乗り越えたが、従来的なリテールだと「今年の売上」が重視されるため、そのギャップをどのように埋めるかにプロジェクト推進者の手腕が問われる。
ストライプインターナショナルといえばearth music&ecologyが有名だが、これもアパレル業界では珍しかったテレビCMを活用して結果を出せたブランドだ。このように挑戦し続けてきたことが同社の最大の強みであり、メチャカリもその挑戦の1つ。サブスク・ビジネスも国内でますます勢いづいていくと思われるが、最前線を走るメチャカリはどのように成長していくのだろうか。