モノが売れない原因はたった一つ!?
今回紹介する書籍は『4000万人の購買データからわかった!売れない時代にすぐ売る技術』。著者は、楽天で購買データ分析や「楽天市場」のビジュアル統括などに携わり、「楽天スーパーSALE」の総合プロデューサーとしても辣腕を振るった大原氏。その知見を基に、ECサイトや店舗の売り上げを伸ばすセオリーを公開しています。
本書がはじめに取り上げている問いは、モノが売れない本当の原因とは何か。「今どきの若者はお金を使わないから、高いモノは売れない」「この色は女性向けだから、男性には売れない」など、様々な理由が挙げられることがありますが、著者は、こうした自己分析の99%は間違っていると主張します。
著者によると、モノが売れない原因は一つだけ。それは「伝わっていないこと」で、具体的には2種類の状況に分けられます(p.40)。
1.その商品自体のよさがストーリーとして伝わっていない
2.その商品の存在が伝わっていない、つまり消費者にリーチできていない
本書で繰り返し強調されるのが、商品のイメージやストーリーの重要性。それらは人々の購買行動、特に初めての購買の際に大きな影響を及ぼすと言います。実際に楽天市場のあるショップでは、画像の差し替えを行っただけでクリック率が37倍、売り上げが4倍にアップしたそうです。そのため著者は、よいイメージを伝えるために、データやそこから導いたセオリーを駆使すべきと呼び掛けています。
「分析できるデータがない」と諦める前に
本書の第1章では、売り上げアップを目指したデータの使い方を掲載。少々耳が痛い言葉が見つかるかもしれませんが、これからデータ活用を本格的に着手したい場合にも、日々の取り組みを改善したい場合にも、役に立つはずです。
たとえば「自社には使えるデータがない」と考えている人に対しては、「データは存在しないのではなく、データとして認識されていないだけ」と、次の三つを実行してみることを勧めています(p.48)。
・これまでデータとして見ていなかったものをデータとして認識すること
・システム部などにデータの有無を問い合わせること
・それでもデータが見つからないなら、小さくデータを取りはじめること
加えて注意したいのは、データがあるのに活用できない会社にならないこと。著者は、活用できない会社は「これといった目的もなくデータを取っている」と指摘しています。「いつどこかで何かの役に立つかもしれないから、とりあえず取っておこう」という意識で収集したデータは、たいていの場合役に立たず、誰かに共有されることなく忘れられてしまうのです。
売り上げは三つに分けて分析する
本書の第2章以降では、よいイメージをもってもらうためのモノの売り方を解説。最初のステップは、売り上げを次の3要素に分けて考えてみることです。
売上=訪問数 × 転換率(コンバージョン)× 客単価
要素を分解するのは、自社の強みと弱みを把握し、売れない原因を明らかにするためです。著者は、三つの要素の中で一番に改善すべきは訪問数、次に転換率を上げるべきとアドバイスしていますが、その理由は本書で詳しく説明されています。
さらに、「訪問数アップさせる『三つの方法』」「ドリンクや水は背景が白色のほうが売れる」「『去年の検索ワード』から生まれた商品で売り上げ1.7倍アップ」など、楽天でのデータ分析から導かれたセオリーも披露。少しの工夫で改善できそうな項目も見つかります。
売り上げ拡大のヒントを探しているマーケターやEC担当者は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。