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イベントレポート

SNSマーケは「速度」と「シミュラークル」で攻略せよ/電通・天野氏がデータで紐解くコミュニケーション


SNSを制するポイントは“速度”と“シミュラークル”

 メディア利用の実態や各SNSのインサイトを踏まえて、マーケターやPRパーソンは、顧客とどのようにコミュニケーションを図っていけば良いのだろうか。天野氏は、2つのキーワードを紹介した。

 「1つは“速度”です。SNSのコミュニケーションの特性は速い(ファストである)ということ。手軽に発信し、容易に拡散できるからこそ、大勢の人が乗っかる話題を形成できるのです」(天野氏)

 誰もが手軽に発信できることは、個別の投稿の重みが小さくなってしまうことも意味する。SNSにおけるコンテンツの寿命を調べたある調査によると、Twitterは数十秒、FacebookやInstagramは数時間ほど。しかし「企業は、このようなSNSの速さを活用していかなければなりません」と、天野氏は述べる。

 「ファストなコミュニケーションの“お作法”を踏まえつつ、ブランドの人格、つまり世の中での立ち位置を上手く組み合わせて発信することで、届くコミュニケーションが実現できる時代なのです」(天野氏)

 各プラットフォームの速度を活かした具体例として、2019年のカンヌライオンズ・ソーシャル&インフルエンサー部門の受賞作品が紹介された。

DIESEL:Instagram上のコミュニケーションを捉えて活かす

 DIESELは、Instagram上のコミュニケーション特性を捉えた施策を多数展開している。たとえばインフルエンサーの苦労を表現し、「フォロワーでいよう」と呼び掛ける動画「BE A FOLLOWER」を公開。「いいね」を欲しがる気持ちや、有名になりたがる気持ちに対し、DIESELがそれらを助長している自己反省も含めてカウンターを示した。

BE A FOLLOWER - DIESEL SS19

 また、SNSに書き込まれたインフルエンサーへの中傷を洋服にプリントし、ターゲットになった張本人に着こなしてもらいプロモーションを展開(参考記事)。ネガティブなコミュニケーションを逆手にとり、話題を呼んだ。

英国バーガーキング:情報鮮度が高いうちにリプライ

 英国バーガーキングはソーシャルコミュニケーションエージェンシとタッグを組み、Twitter上の話題を迅速にキャッチアップできる体制を構築している。それが活かされたのが、不可解な言動を連発し物議を醸していたラッパーのKanye West(カニエ・ウェスト)氏への辛口ジョークだ。

 カニエ氏の“McDonald’s is my favorite restaurant.”というツイートに、"Explains a lot."(なるほどね)とリプライ。競合他社をユーモラスに茶化すバーガーキングらしさが出たこのツイートは、25.3万件のリツイートと98.1万件のいいねというアカウント史上最高のエンゲージメントを獲得した(2019年12月時点)。カニエ氏の言動に対する世の中のもやもやした感情を汲み取り、情報の鮮度が高いうちに切り返したことで、共感を集めた。

SNSマーケティングの大原則は、GIVEの実践

 天野氏が提示したもう1つのキーワードは“シミュラークル”だ。

 「シミュラークルとは、模倣やコピーなどと近い意味をもつ言葉。誰が最初に始めたのかわからないが、みんなが真似をしたがるビジュアルがパターン化し、拡散していく現象を指します」(天野氏)

 具体的には「料理を真俯瞰から撮ったフラットレイ型の写真」「人気の旅行先での流行りのスポットで似た構図で撮影すること」「タピオカミルクティーを2人で容器を少し傾けて撮る写真」などが挙げられる。背景には、スマートフォンの普及で誰もがビジュアルで体験を可視化して発信できるようになったこと、消費社会の成熟化にともない、人々がモノだけでなくコト(体験)の記号的価値を重視するようになったことがある。

 シミュラークル型の情報/トレンド拡散のパターンは、強い発信者がきっかけで情報が広がっていくマス型・インフルエンサー型とは違い、発信源が曖昧なまま広がっていくのが特徴だ。

情報/トレンド拡散のパターン比較
情報/トレンド拡散のパターン比較

 SNSを軸としたマーケティング・PRにおいて、このパターンを押さえておくことは欠かせない。

 「自分のSNSアカウントをパワーアップさせよう、発信力をつけようという考え方は、マス型、インフルエンサー型の拡散パターンに沿うもの。SNSでは自らが『広げる』というよりも『広めてもらう』という考え方が大事で、ユーザー側がシェアしたくなるような切り口、話題を作ることで、より広範に情報が届くという構えが必要です」(天野氏)

 生活者の役に立つ情報、知りたいという思いに応える情報、そして感情的な満足感とおもしろさをそなえた情報を提供しながら、つながりを育んでいく。天野氏はこのことを「SNSマーケティングの大原則はGIVEの実践」と表現し、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/17 18:59 https://markezine.jp/article/detail/32380

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