スマホ&SNSの利用実態は?
はじめに登壇したのは、電通メディアイノベーションラボ 主任研究員の天野彬氏。天野氏は、2019年10月に上梓した『SNS変遷史~「いいね!」でつながる社会のゆくえ~』の内容を基に、SNSが企業と生活者のコミュニケーションにどのような影響を与えているのかを解説した。
最初のトピックは、SNSとは切っても切り離せない“スマホシフト”について。デバイスの普及率は頭打ちになりつつある一方、i-SSPモバイルパネルでアプリの起動ログデータを集計したところ、1日あたりのアプリ利用時間(全世代平均)は、2017年は128分、2018年は170分、2019年のは191分と大きな伸びを見せていることがわかった。
次に天野氏が紹介したのは、アプリの利用時間をカテゴリー別に集計したデータだ。スマートフォンの使い方は年代に応じて語られることが多いが、実は性別によっても異なる傾向が見えてくる。
たとえば、10代男性はYouTubeなどの動画共有アプリ(グラフ:濃いピンク色)をよく使っているのに対し、10代女性はInstagramやTwitterなどのエンタテインメントアプリ(グラフ:水色)の利用時間が長い。また、ゲーム(グラフ:薄いピンク色)に多くの時間を費やしているのは、40代、50代の女性という意外な結果も見て取れる。
こうしたアプリ利用時間の伸長は、生活者の情報収集行動にどのような影響を及ぼしているのだろうか。天野氏は、メディア分野利用頻度のシェアを年代別に調査した結果を明かした。
50代、60代では「放送(図:青色)」のシェアが1位であるのに対し、40代以下は「ネット・デジタル(図:黄緑色)」「動画・音声(図:赤色)」「SNS・ブログ(図:黄色)」などの割合が大きくなっている。興味深いのは、10代が示す傾向が他のどの世代とも異なっている点だ。
「10代を見ると、SNSが占める割合が最も高く、動画のシェアも大きい。『若い人はネット、年齢の高い人はマスメディア』という2ブロックで考えがちですが、日本のメディア構造はそうではなく、(1)10代、(2)20代から40代、(3)50代以上、の3ブロックになっているというのが私の見解です」(天野氏)
Twitterは広場、インスタはその人の家!?
SNSのユーザー数・利用時間の拡大にともない、シェアされるコンテンツは多様化し、プラットフォームの使い分けも進んでいる。天野氏は「SNS定着期」である現在の利用実態を把握する手がかりとして、Instagram、Facebook、Twitter、そしてTikTokの特性を次のように整理した。
「Instagramは、とっておきの体験をシェアする場であると同時に、ユーザーが自らの世界観を作り込み、表現する場になっています。一方、Twitterは拡散やリアルタイム性に特化していて、世の中の出来事を他の人がどう思っているのかを確認するために使われる傾向があります。イベントの時に、皆がTwitterを起動して盛り上がる、というのは、他のSNSには見られない特徴ではないでしょうか」(天野氏)
またFacebookは、グローバルではMAUが24億と圧倒的なシェアを誇るプラットフォームだが、日本では3番手で、オフィシャルな投稿をする場として定着している。シェアを伸ばしつつあるTikTokは、「撮影したコンテンツを音に乗せると、“エモく”なりやすい。発信者の世界観を表現するという側面においては、今後Instagramとしのぎを削る面もあるかもしれない」(天野氏)という状況だ。
以上の整理を基に天野氏は、各SNSのユーザーインサイトを以下のようにまとめた。
Instagram:その人の家/部屋に遊びに行く
Facebook:パーティー会場での社交
Twitter:皆が何をしてるか見に広場へ
TikTok:????(調査中)