ゴディバが解き放った「義理チョコ」の呪縛
白石:一方で、多くの方から共感を得たキャンペーンについて見てみたいと思います。2018年のバレンタインに、ゴディバが代表取締役社長の名前で「義理チョコをやめよう。」という新聞広告を掲出しました。
守屋:ゴディバの企業としての意思を示したのと同時に、社長の名前で広告を出したことで、社長個人の「Iメッセージ」として表現されたことは、注目すべき点です。
賛否含めて多様な意見が出てきましたが、「職場の慣例に従って、義理チョコをあげなければいけない」という呪縛にとらわれていた人たちにとっては、その「アンコンシャス・バイアス」から解放されることとなり、本来の目的を考えるきっかけとなりました。
白石:「Iメッセージ」による「問いかけ」が、多様な意見をつまびらかにし、人々の「対話」を活発にさせている。これはまさに多様性時代のコミュニケーションの一つのあり方ですね。

自分の中の「アンコンシャス・バイアス」を解放する
白石:最後に、「アンコンシャス・バイアス」を払拭するためにはどうすれば良いのでしょうか。これほどたくさんのバイアスがあるとわかって、及び腰になってしまう人も多いのではないかと思います。
守屋:「アンコンシャス・バイアス」は、無意識のうちにとらわれているものですから、どれだけ払拭しようとしても生まれてしまうものです。そして誰しもが持っています。「もうなくなった」とか「わかったから大丈夫」ということはありません。自分にはどんな「アンコンシャス・バイアス」があるのかを、まず認識することが大切です。
白石:どうすれば、自分の「アンコンシャス・バイアス」を認識できるでしょうか。
守屋:書き出してみることですね。たとえば、「女性・男性に対してこんな決めつけをしていた」「特定の人に対して、こんな思い込みをしているかもしれない」「会議の発言で、決めつけや押しつけをしている自分に気づいた」など、些細なことで構いません。まずは2週間、気になったことをメモすることからはじめてみてください。続けると、自分の考え方の傾向や思い込みの癖が見えてくるはずです。
白石:メッセージを考える際には、最初のブレストなどで、チームみんなの「アンコンシャス・バイアス」を書き出し認識すると良いかもしれませんね。リスクヘッジにもつながりますし、新しいアイデアが生まれるきっかけになるかもしれません。今日は学びの多いお話をありがとうございました。
次ページでは、白石氏が今回のインタビューをもとに、マーケターに向けた具体的なインサイトをまとめています。こちらもぜひご一読ください。
