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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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スシロー&ストライプと考える、アフターデジタル時代の顧客体験【チャネルを超えた最高の接客とは?】

店舗を最初の接点にして、ECで価値を上乗せする

MZ:では、ストライプさんのお取り組みもご紹介いただけますか。お客様との接点として、店舗やECをどのように活かしているのでしょうか。

佐藤:現在のところ、店舗のみをご利用いただているお客様が多い状況です。一方で、店舗とECの両方を使われているお客様は、店舗またはECだけを利用されるお客様と比べて4倍もの金額を使ってくださることがわかっています。どのような因果関係があるかは明らかにできていないのですが、「両方のチャネルを利用=熱心なファン」である可能性は高いと思っています。

 そのため、店舗を接点にブランドを知ってくださったお客様に対して、デジタルを通じて「便利・ラク」、「ニュースやより深い情報が得られる」など、プラスアルファの価値を届けていくことを重視しています。

 たとえば自社EC「STRIPE CLUB(ストライプクラブ)」には、店舗スタッフのコーディネートを複数載せています。店舗スタッフが自身で投稿できる仕組みを導入しているので、1アイテムの複数コーディネートをご覧いただけますし、着用しているスタッフの身長も書いているので、店舗で試着しなくても、ある程度サイズ感をわかっていただけると思います。

「STRIPE CLUB」の画面イメージ。スタッフの着こなしをランキングで表示。着用しているスタッフの身長が記載されている。
「STRIPE CLUB」の画面イメージ。
スタッフの着こなしをランキングで表示。着用しているスタッフの身長が記載されている。

佐藤:写真にはブランド名や店舗名を載せているので、どのお店に行けばアイテムが手に入るかがわかりますし、「近所のお店のスタッフがランキングに出ているな」というのもわかります。スタッフたちも、お客様とのエンゲージメントを定量的・定性的に感じられるので投稿を頑張ってくれていますね。

MZ:ECサイトですが、その場ですぐに買ってもらうことを最優先にしているわけではないのですね。

佐藤:はい。「クラブ」という名前にもあるとおり、ここで買っていただくというより、お客様との接点を増やすことに力を入れています

 重要なのは、リアルとデジタルそれぞれの得意不得意を捉えて活かすことです。デジタルの強みは、時間、距離、情報量に制約がないところですので、ここを徹底的に磨き込みたい。データに基づいたアプローチもそうです。

 逆に、リアルが得意とするのは接客の部分。スタッフが作業に時間を取られず、お客様の生のニーズを聞いてお勧めしたり、ブランドフィロソフィーを伝えることに専念したいですね。

“心地良いパーソナライゼーションの度合い”を探る

小河:実は私自身は、あまり服のECを使ったことがありません。なぜECを使わないかというと、なかなかぴったり合う服に出会えないのです。返品するのも申し訳ないと思ってしまって……。

佐藤:同じサイズ表記でも、ブランドによって微妙に大きさが違っていたりするため、服のECはとても難しいですよね。グループ会社のストライプデパートメントでは、デジタル上でスタイリストとやり取りし、フィットするアイテムを選んでもらえる「パーソナルスタイリング」を展開しています。

佐藤:最初にアンケートを取り、スタイリストがチャットでヒアリングをした上で、コーディネートのご提案をしています。お客様とやり取りさせていただいたデータや過去の購買データも反映しています。現在は半数以上のお客様に、複数回ご利用いただいていますね

小河:アパレルのECはサイズの問題があるからこそ、自分にフィットするブランドを見つけられると、リピーターになりやすいですよね。

佐藤:そうですね。オンラインでも工夫次第で顧客体験を高めることができる、というのがチャレンジして気づいたことです。

 これからより間口を広げていくためには、人力で行っていた部分をAIに任せていく必要も出てくると思います。ただパーソナライゼーションについては、お客様が心地良く感じるレベルはどこまでか、というのを考えながら行っていく方針です。

 技術的には、お客様の写真をアップロードしていただいてぴったり合うサイズをご提案したり、店舗での買い物の直後にプッシュ通知でおすすめのアイテムをお知らせしたり、といったことも可能だと思いますが、やりすぎと感じられてしまうのは本末転倒です。ちょうど良い度合いを探りながら進めていきたいですね。

MZ:ありがとうございます。最後に一言ずつ、来場者の方々へのメッセージをお願いします。

小河:私たちは生活の中で、既にデジタルを使いこなしています。だから企業側がデジタル、リアルと分けていてはダメで、一気通貫で考えていかないとなかなか難しいんだろうなと思っています。そのためにはやはり、お客様が日々どのように生活をされているのか想像して、コミュニケーションを設計していくことが大切なのではないでしょうか。

佐藤:ストライプは現在のところ、店舗をお客様との接点の中心としていますが、重要なのはお客様に来ていただくのではなく、お客様がいらっしゃるところに、いかに自分たちが近づくかだと思っています。「STRIPE CLUB」や「パーソナルスタイリング」も、ニーズに合わせた売り方をすることで、新しいお客様との接点を増やす試みです。

MZ:本日はありがとうございました。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/14 07:00 https://markezine.jp/article/detail/32523

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