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アドテック東京 2019

PR=“パブリシティ獲得活動”ではない/マーケティングの要を握る「PR」の本質とは?

イノベーションは合意形成と極めて密接

 3つ目の質問は、杉浦氏からで「10年後のPRはどうなっているか?」というもの。仮に10年前を考えてみると、スマホがまだ黎明期であり、個人インフルエンサーのようなステークホルダーも多くはなかった。太田氏は、今様々な業界でイノベーションを起こそうと模索されている状況に触れ、「スマホも技術革新だけでなく、『いいよね』という合意形成が世の中にできあがった結果、イノベーションといわれるものになった。今後、企業がイノベーションを仕掛けていくなら、合意形成を考えずにはなし得ない。PRが、宿命的なことになっていくのでは」と語る。

 スマホやキャッシュレスなどの技術革新だけでなく、認識や見方を変える、常識を覆していくことに皆が賛同すれば、それもイノベーションの兆しとなる。太田氏が例として挙げるのは、昨今の女性のエンパワーメントという潮流において“生理をタブー視しない”という切り口を捉え、紙袋で隠さなくていいシンプルなパッケージのナプキンを模索したユニ・チャームの活動。商品自体が変わらなくても、この認識の広がりによって新しい市場も生まれるはずだ。

 石渡氏は自社のサブスク型ファッションレンタルサービス「メチャカリ」を例に、「服はほとんどの人が購入しているが、“服は買うもの”から“借りるもの”へ、認識を変えようとしている」と話す。1%の人が服のレンタルを利用するようになると、アパレル市場の1%である約1,000億円の市場が生まれる。そこでトップを獲れれば一定の規模になると見込み、新しい習慣として根付くよう活動中だ。

チャンスの最大化とリスクの最小化

 社会潮流を捉えて、そこに自社の活動を重ねていくアプローチ。一方でみずから新しい認識を作ろうとするアプローチ。「いずれも従来のPRの在り方で、きっと今後も変わらないところだと思う」と廣澤氏。

 ひるがえって、太田氏は先の「PRの役割は競争環境を有利にすること」という廣澤氏の発言に注目し、「この指摘がすべてではないか」と話す。「時代の潮流をどちらにもっていくかをPRが担うなら、10年後は、マーケティングの要をPRが握るようになっているのではないか」(太田氏)

 石渡氏はさらに、ガバメントリレーションズによる優位性の獲得に言及。法律を変えることもそのひとつだ。10年後、また新しいサービスや事業が生まれていることを考えると、今はまだないルールづくりに積極的に関与するための関係構築の重要性がよくわかる。

 最後に、改めて杉浦氏から「PRとコミュニケーションの本質とは」と尋ねられると、廣澤氏は「PRを社会との関係構築とすると、まず関係を構築しようとしている対象、つまり社会とは一体何なのかを考えることです。日本には社会とは別に”世間”や”空気”という捉えにくい概念があるので、社会という概念の中にある日本独特の距離感を意識することも必要です」と回答。

 一方、太田氏はミクロな視点で「PRも突き詰めると人と人とのコミュニケーション。意見や背景が違うもの同士の溝を埋め、同じように『いいね』と思えるその先に大きな合意形成があると思う」と話す。そして、「PRとは『チャンスの最大化とリスクの最小化』が本質だと思う」と石渡氏。マーケティングの観点からはチャンスのほうにばかり目が向くが、有事の際に企業活動が止まることを防ぐリスクマネジメントもPRの大事な役割だ。

 三者三様の意見から、企業活動そのものにとってステークホルダーとの合意形成がいかに大切かが浮かび上がった。今後PRの意義がさらに理解され、マーケティングと相互補完して、企業と生活者の双方によりよい未来をもたらすことを期待したい。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/18 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32582

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