消費者の情報収集や購買行動において、ますますオンラインとオフラインの垣根がなくなっており、あらゆるタッチポイントでアプローチを実施していく統合マーケティング(IMC)を重要視する声が強まっている。しかしながらIMCの実現のためには、顧客の本質的なインサイトをつかみ、個人に沿ったマーケティングストーリーの作成が必要となり、そのための組織構築というのも課題に挙がっている。対してライオンが2017年9月に宣伝部を再編してコミュニケーションデザイン部を作り、CXプランニング室を設置してから約2年。顧客体験の価値を追求したコミュニケーションを実践してきた同社のCXプランニング室長の大村和顕氏に、ライオンのマーケティング、IMCの考えや、それに向けた取り組みについて語ってもらった。
※本記事は、2019年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』48号に掲載したものです。
デジタルとリアルの行き来を前提とした設計

ライオン株式会社 コミュニケーションデザイン部 CXプランニング室長 兼デジタルコミュニケーション開発室長 大村和顕(おおむら・かずあき)氏
大手旅行代理店、国内大手Sierを経て、2006年にアイ・エム・ジェイに参画。様々なナショナルクライアントのデジタル戦略策定およびWeb・アプリケーションの開発をプロデュースする。2017年にライオンへ参画し、デジタルトランスフォーメーションを進めるべく、CXプランニング室とデジタルコミュニケーション開発室を牽引している。
――ライオンでは、現在統合マーケティングにおいてどのような取り組みを行っていますか。
統合マーケティングではよくマスとデジタルの最適配分について語られるケースが多いですが、当然行っています。加えて、人はデジタルとリアルを行き来するということを前提に、我々はコミュニケーションを設計しています。
具体的にはターゲットユーザーのインサイトを正確に理解し、カスタマージャーニーを可視化して、その上で態度変容を促せるようなプランニングを実施しています。その結果、マス広告が主軸になることもあれば、デジタルが中心になることもあります。
――とはいえ、マス媒体と、デジタル媒体ではそれぞれに特色があると思うのですが、どう考えていますか。
既に周知された内容だと思いますが、テレビやラジオなどのマス媒体は、広範囲に同一のメッセージを効率的に届けられるメディアであり、ときおり、受動的な視聴態度になります。一方、デジタル媒体は、能動的に見ようとする特徴があって、属性やデータをもとにターゲティングができ、リアルタイムに効果検証して改善するといったPDCAが回しやすい。
認知を取るためにマスを使って、製品理解をさせるところはデジタルに任せるなど完全に役割を分けてコミュニケーションを考えることもありますし、テレビCMに加えてデジタル広告でリーチを補完していくこともあります。絶対にこれという正解はなく、様々なパターンを試しています。
――統合マーケティングを進めていく上で、課題となっている点はありますか。また、その課題を解決するために現在取り組んでいることはありますか。
特に思うのは、「メンバー一人あたりの負荷の増加」と「人材育成」です。我々の製品の場合、ターゲットユーザーが1つのペルソナに収まることはあまりなく、いくつものターゲットに対してコミュニケーションしていくことが多いです。そのとき、我々は「4Rコミュニケーション」という言葉をよく使うのですが、「Right Person(最適な相手に)」「Right Timing(最適なタイミングで)」「Right Contents(最適な内容を)」「Right Place(最適な場所で)」という4つのRを意識してプランニングしています。
ですが、それらには大きな労力とスキルが必要になってくるので、これまで以上に社員の負荷が増えてきているのが「メンバー一人あたりの負荷の増加」という1つ目の課題です。
2つ目の「人材育成」は、マス・デジタル両方に知見を持った人材が少ないという課題背景があります。広告・マーケティングに関わる人間の多くがマスかデジタルどちらかの出自であることが多く、両方を理解し適切なプランニングができる人は、非常に稀有な存在です。外部から採用しようと思っても難しいので、我々はそういった人材の育成に力を入れています。
具体的には、デジタルでPDCAを回せる素質がある若い人材を採用して、マス広告に関する知見を教育するという流れを踏んでいます。まだ十分とは言えませんが、マーケティング人材の成長には、施策を検証して、その結果をもとに学んで改善するという経験が必要だと思っているので、そういった素質のある人材にどんどんトライアル&エラーしてほしいと普段から言っています。
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畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)
フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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