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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

デジタルとフィジカルを融合し、効果にコミットするクリエイターに

これから必要になるのは狭いコミュニティの中で効く広告

――では、異種格闘技戦が行われている現在、デジタル上で話題になる広告に必要なことはなんだと思いますか。

 話題になるデジタル広告の条件には、シェアしたくなる言葉やビジュアルなどの要素がたくさん仕込まれていること、または欲を刺激しているという意味では、承認欲求を満たす要素も必要でしょう。

 ただデジタルクリエイティブにおいて、話題にさせる事は一つのオプションであり、ゴールではないです。ターゲティングができて、メッセージの届け方も一つではない今、話題を狙うにしても、その「範囲」を見定め、そこに応じたクリエイティブ開発を行うべきです。たとえ全員知っていなくとも、広告効果の高いクリエイティブが存在しています。

――ただシェアを出すだけではなく、売上など事業に貢献する成果を広告で生み出すべきということでしょうか。

 その通りです。それに、話題にならない広告=悪とは限りません。先述した通り広告の形もいろいろ変わってきていて、リッチな動画を制作して配信費用をかけるよりも、ファンがたくさん付いているインフルエンサーに紹介してもらったほうが、効果の高いケースも増えています。たとえば、若い女性に人気のあるインフルエンサーは、ライブ配信で商品を即完売させていたりします。しかも、彼女は広告宣伝費を使わずにそれをやってのけるわけです。

 でも、大多数の人はそのことを知りません。なぜなら広く告知されていないし、世の中的に話題になっていないから。そのインフルエンサーの場合、数万人という話題の中で話題になっていればOKなんです。

 ここから考察できるのは、ひと昔前の「話題」は、マス的発想で多くの人が知っていることを“話題になる広告”と呼んでいましたが、今の時代の“話題になる広告”というものに必要な範囲が狭くなっているということです。コミュニティ内で話題になるという考えだけでもいいわけです。

 世の中のたくさんの人に話題になるクリエイティブと、特定の人たちに話題になるクリエイティブでは作り方が全然違ってきます。話題にさせたい範囲を考えた上で、必要なクリエイティブ、体験をデザインする必要があると思います。

 こうしたことからも、「良いクリエイティブの定義」や、「話題」の範囲、ひいては、「広告」という言葉を見直さなければならない時期にあるのかもしれません。

――狭い範囲で熱狂的なファンを生んだり、興味を持ってもらえたりするようなクリエイティブで、話題を作る際に必要なことはなんでしょうか。

 コミュニティに刺さるクリエイティブにするには、ハイコンテクストな表現や言葉が必要となります。そのコミュニティの人しかわからない専門用語や表現など、そうしたマニアックと言えるツボがあるはずなので、マニア同士の対話などからヒントをつかんでいくことが重要です。

 これからのクリエイターには、広く伝えるクリエイティブと、コミュニティを捉えてその中に効くクリエイティブ、その双方を上手く使いこなして事業貢献につながる広告効果を出していくことが求められるのではないでしょうか。

最大の広告効果を出せる事例を作りたい

――ご自身の事例で、狙い通りのクリエイティブができたと思うものを教えてください。

 過去に実施したものだと、「Wedding Fes 〜夢みるガラスの靴〜」(2014年)という、特別な計測システムを搭載したガラスの靴を制作して、現代のシンデレラを探すというストーリーでイベントを開催しTwitterなどSNSで自然拡散し、全国からチャレンジしてくれる女性が集まった企画や、渋谷や原宿など指定エリアの街中に配置されたデジタルインセンティブをスマホで集め、ランキングを競い合うアパレルブランドの企画などがあります。ポケモンGOもまだリリースしていませんでしたが、多くの人に参加いただけました。

「Wedding Fes 〜夢みるガラスの靴〜」
「Wedding Fes 〜夢みるガラスの靴〜」

 最近ですと、ホンダ創立70周年を記念したブランドムービー「Honda “ORIGAMI”」は、広告賞も獲得しクリエイティブ界でも評価いただきました。完全視聴率が高くてポジティブな声も世界中から集まり、ブランディングに貢献できたのではと思っています。デジタルで人を動かして、かつクリエイティブ表現としても新しい事例というのは、まさに仕込み中です。

「Honda “ORIGAMI”」
「Honda “ORIGAMI”」

――事業主のマーケターに対して、求めることはありますか。

 コンペの開催方法のアップデートに期待しています。人の心や体を動かすクリエイティブを設計するためには、クライアントやブランド、その市場やターゲットに至るまで深い理解が必要ですし、設計すべきクリエイティブの幅も広くなっています。

 単一フォーマットで単純比較をするのであればコンペは有効かもしれないですが、デジタルを主戦場にして広告効果を出していくことに向き合うのであれば、深い付き合いの中から生まれるクリエイティブのほうが安定的に効果を出せる確率が高いと思います。

 デジタルは一発やって終わりではありません。一発大きく仕掛けるキャンペーン型脳と、継続的に効果を出し続けていく運用型脳があると思っているのですが、これを融合した脳でデジタルマーケティングに向き合ったほうが絶対良い。そういうスタンスでクライアントとも仕事ができればと思います。

――最後に、今後の展望について教えてください。

 広告効果を最も上げるクリエイターになりたいと強く思っています。それはブランディング、セールスどちらの面においてもです。そのためには今までの発想の仕方と作り方をリセットする必要があると考えていて、その上で新しいルール、制作プロセスを作りたいと考えています。

 入社当時から掲げている、「デジタルとフィジカルの融合」は、5GやARなどの登場で、ますますその可能性を広げていくと思っています。あらゆる事がデジタルとフィジカルを行き来し、融合した一つの体験として発展していくので、その中で活きるクリエイティブを突き詰めていきたいと思っています。

 また、ますますパーソナライズド化していくデジタルクリエイティブにおいて、その量、スピードに対応するために、CGの活用やAIと連携したワークフローを構築していきたいです。人だけでは実現できない新たなチームワークを作る事で、「クリエイティビティ×運用力」は大きく飛躍していくはずです。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/25 15:30 https://markezine.jp/article/detail/32653

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