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デジタル時代だからこそ、紙媒体は「感覚」に強く響く/アカデミック視点で探るコミュニケーションの理想形

2020/01/29 10:00

 消費者の生活にデジタルが急速に浸透している一方、リアルの強みを活かした店舗やイベントが人気を集める動きも見られる。マーケティングコミュニケーションにおいても、紙のDMとデジタルを組み合わせることで、手触りや重さといった「感覚」を通じて、強いメッセージを届けることができるはずだ。本記事では「感覚マーケティング」をテーマに研究する3名の先生方にインタビューし、アナログとデジタルを効果的に組み合わせるコツを、アカデミック視点で語ってもらった。

目次

“不可解で非論理的”な人間の行動を解き明かす

――今回は、千葉商科大学商経学部の外川 拓先生、東京国際大学商学部の平木 いくみ先生、早稲田大学商学学術院の權 純鎬(こん すんほ)先生にお話をうかがいます。まずは、先生方の研究領域についてお聞かせください。

外川:私たちは共通して「感覚マーケティング」をテーマとしていて、私は主に消費者がもつ“人間くささ”にフォーカスした研究に取り組んでいます。

 人間の行動について語られるとき、かつては人間をコンピュータに見立て、理路整然と情報を処理するようなモデルが用いられてきました。しかしよく考えてみると、私たちはすべての物事について、筋道を立てて判断しているわけではないですよね。現在は、うまく説明のできない様々な要因から影響を受けて、なんとなく物事を決めているという側面も重要視されるようになってきていますその判断要因の一つが感覚なのです

千葉商科大学商経学部 准教授 外川 拓先生
千葉商科大学商経学部 准教授 外川 拓先生

平木:私は、「楽しい」「ワクワクする」「悲しい」といった人間の感情が、消費行動にどのような影響を与えるかについて研究をしています。

 最近の興味は、外川先生と同様に「必ずしもよく考えていない」消費者像にあります。私が大学院に入った2000年頃は、どちらかと言えば「よく考えて動く」消費者が前提とされていました。しかし出産や子育てをしながら研究を続けていた10年間を経て、もう一度本気で研究しようと大学院のゼミに戻ったとき、「感覚で動く消費者」にスポットが当たるようになっていました。

 私自身も、訪れた店舗の音や色、雰囲気などに感情や感覚が刺激されて、衝動的にモノを買ってしまうことがあります。このような、論理では説明しにくい人間の消費行動を解き明かしたいと考えています。

東京国際大学商学部 教授 平木 いくみ先生
東京国際大学商学部 教授 平木 いくみ先生

權:私の専門はお二人と少し違って、電子と紙の媒体比較がメインです。電子書籍のほうがかさばらなくて便利なのに、なぜか紙の書籍を好む人は多いですよね。音楽や映像コンテンツも完全にデジタル化しているにも関わらず、CDやDVDという形あるもので買おうとする消費者もたくさんいます。このような一見、非論理的で不可解な現象を紐解くための一つのヒントが「触覚」だと考えているんです。

早稲田大学商学学術院 助手 權 純鎬先生
早稲田大学商学学術院 助手 權 純鎬先生 

DMを受け取った消費者の一連の行動を明らかに

――先生方が取り組まれた、日本郵便さんのプロジェクトにおける共同研究『クーポンの送付形式と消費反応-印刷媒体と電子媒体に着目して-』の結果は、以前MarkeZineにもご紹介いただきました。研究について、率直な感想を改めてお聞かせいただけますか。

共同研究について

 富士フイルムの協力で行われた本研究では、紙のDMとEメールを組み合わせたキャンペーンについて検証し、以下の結果が明らかになった(参考記事)。
(1)紙のDMはEメールより訴求力が高く、30代以下で好印象
(2)30代以下は紙のDMに「温かみ」を感じる
(3)ロイヤリティの高い顧客にはEメールは響かない

平木:私たちが日ごろ取り組んでいるアカデミックな分析が、企業の役に立っているという実感が得られました。普段研究するときは、論文を読んで仮説を立てて検証するプロセスをとるのですが、分析結果にどれだけの価値があるのかを実感するのは、なかなか難しいものです。しかしこの研究結果は実務家の皆さんからも大きな反響があり、研究の意義を強く実感しました。

外川:消費者がDMやメールを受け取ってからクーポンを使うまでの一連の行動を、まるでムービーを見るかのように理解できたのが印象的でした。アカデミックな領域では、特に希少な機会だったと思います。

權:実はクロスメディア研究の中でも意外と、紙とデジタルを統合した研究は少ないんです。この実証実験を通じて、デジタルとアナログは敵対するものではなく、補完関係にあるとわかったのは大きな成果だと考えています。


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