デジタルとアナログは補完関係にある
――先生方の研究領域では、デジタルとアナログの掛け合わせについて、興味深い結果が多数発表されているのですね。両方を用いた効果的なコミュニケーションのコツを教えていただけますか。
外川:デジタルとアナログを二項対立で捉えないことが大切だと思います。「デジタル vs. アナログ」という考え方ではなく、「デジタル with アナログ」と考えるべきです。
メールやソーシャルメディアといったデジタル施策も、使い方やタイミング、内容、送る相手を正しく選定すれば効果的なのは当然のこと。デジタルとアナログ、いずれも消費者に「あなたのことを大切にしていますよ」と伝えるための手段と捉え、“いいとこどり”のハイブリットにしていくと良いのではないでしょうか。
特に紙媒体であるDMは、たとえ捨てられてしまうとしても、一度見なければ捨てることすらできません。確実に手に取ってもらえる特性を活かして、メリットを感じてもらえるような施策や、思わず読んでしまうような印象に残る仕掛けをDMに施し、デジタルへ誘導していくなど、やり方は無限にあると思います。
權:両媒体の特性や人間の感覚をうまく利用して、意外性を演出することが重要ですよね。共同研究では、紙のDMとEメールの送付順が重要であることも示唆されましたし、DMを送った後に、リマインドとしてEメールを送ることで、DMを嬉しいと思う人の割合も増えました。このように、受け取った人の喜びや嬉しさ、意外性が増幅するようなデジタルとアナログのかけ合わせ方を模索していただきたいと思います。
紙という媒体が行動を促すメカニズムを探りたい
――最後に先生方の研究について、今後の展望を教えてください。
權:デジタルネイティブに紙のDMが効く理由を、もっと詳しく解き明かしたいですね。これはマーケティングのみならず、教育学など様々な分野で研究が進められているものの、まだはっきりした理由はわかりません。紙という媒体が人の行動を促すメカニズムを、より深く探っていきたいと思っています。
外川:權先生がお話ししている通り、紙のDMには持ったときの手触り、重さ、印刷の香り、形状、開封するときの動作など、消費者の五感に働きかける要素がたくさん詰まっています。すなわち紙のDMは、「複合感覚」によるコミュニケーションが可能な媒体なんです。今後は最も効果的な「感覚の組み合わせ」を追究したいと考えています。
平木:紙でできたDMは、その厚みにありがたさや価値を感じる効果もあると思います。たとえば毎年届いた分だけ束となって厚さが感じられる年賀状も、自分や家族の年月、歴史を感じさせるものなのかもしれません。どんな人にアナログ施策が効き、どんな人にデジタル施策が効くのかという消費者像を、もっと掘り下げていきたいですね。
――本日はありがとうございました。
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