データ「売却」は、広い意味合いがある
「わたし」のデータは第三者に売却されたくないし、企業も「わたしの実データ」を確信犯で無許可で売却するケースは少なくなったと期待している。ところが企業はCCPAやGDPRの「売却」というコトバの「本来の意味」を、過小に考えている。CCPAの言わんとする意味は「金銭売却」だけでなく、勝手に「わたし」のデータを誰かに「手渡しする」「誰かと共有する」「委託する」などは行わないでね、の意味合いである。これが2つ目の視点だ。
たとえば企業Aが、多数の個人顧客から預かったファーストパーティ・データを積み上げて、それらのデータを「分析会社B」に発注してデータ分析をしてもらっている場合、即アウト(顧客にとって気持ち悪い)と思えるかどうか。企業Aは分析会社Bにデータを売るのではなく、分析の料金を「支払う」側なのに、CCPAの概念ではA企業はB業者に売却した(手渡した)と解釈されるのだ。
デジタル広告業界の大転換
「覗き見しない」「データを他者に手渡さない」という基本理想に向かえば、ネット広告の仕組みは大転換する。トラッキングやターゲティングに留まらず、(勝手な)プロファイリングを利用したプログラマティック広告や、入札データをベンダー接続して共有する(売却する)RTBなども「アウト」の対象になる。パブリッシャーがコンテンツのマネタイズのために、トレーディングデスクやSSP等へデータへのアクセスを与えるのも同様だ。個人をターゲティングしないので安全と思われていたGoogleお得意の「コンテキスト広告」も、勝手なユーザープロファイリングが課題になる。GoogleAnalyticsのツール利用も、SalesforceなどのMA活用や、もちろんAWSへのデータ蓄積も、すべての契約関係において「新たな配慮(契約の刷新)」が必要になる。これまでの仕事慣習や現行の法律から逃げ道を考えるのではなく、それらの概念を取っ払い、「わたし」ならば望まない範囲について「自問自答」をスタートさせるときが来た。