2017年、日本に颯爽と登場したクリエイティブエージェンシー、R/GA。ダイバーシティ&インクルージョンのカルチャーを自然に体現しているエージェンシーであり、世界のブランドのパーソナリティをみつめ、企業と生活者をつなぐクリエイティブを数多く発表している。彼らが2018年に資生堂のクリエイティブ本部とスタートした『My Crayon Project』もその一つだ。ダイバーシティをテーマにマーケティング支援をしている白石愛美氏を聞き手に、R/GA東京 マネージングディレクター 代表取締役の鈴木洋介氏に、プロジェクトの背景やこれからの時代のエージェンシーとしてのあり方などについて聞いた。
新しい「資生堂のあり方」を探る『My Crayon Project』
白石:今日、一番お伺いしたかったのは、資生堂の『My Crayon Project』についてです。私自身、このプロジェクトに出会った時に大きな感銘を受けたのですが、これはどういういきさつで始まったのでしょう。
2018年に資生堂とR/GAがスタートした『My Crayon Project』。子ども一人ひとりの肌を資生堂の持つ専用の肌スキャナで精密に計測し、その結果をもとに、それぞれの「肌色」を忠実に再現したクレヨンを制作。子どもたちはそのクレヨンで自分の顔の絵を描く。世界にただ一つの「自分色のクレヨン」で画用紙に色をのせた子どもたちは「私の色だ!」と、歓喜の声をあげる。
鈴木:そもそもこのプロジェクトは、資生堂の商品やCSR活動をアピールしようというような、一過性のキャンペーンではありません。ダイバーシティについて取り組もうと思って始めたわけでもありませんでした。
このプロジェクトの最も重要なポイントは、資生堂のクリエイティブチームと一緒にプロトタイピングを通して「成功するフォーミュラが何なのか」を探っていくことでした。そして、そのために何故、これを資生堂がやるべきなのか。資生堂だからできることを自社の持つテクノロジーを最大限に活用し、新しいアプローチでソリューションを作ろうということ。「資生堂という企業の新しいあり方」を探ることによって、世の中に新しい価値を提供したいということがきっかけだったんです。だからスタート時点ではどんなアウトプットになるのかまったく決めていませんでした。

白石:そこからどのようにこの『My Crayon Project』のコンセプトへとたどり着いたのでしょう。
鈴木:女性の地位向上に貢献しようとか、資生堂のミッションを具現化しようとかいろんなアイデアが出てきました。だけど最終的には、「なぜ資生堂がこのプロジェクトをやるのか」というクレディビリティ(credibility:信頼感) が大切だと思いました。「一人ひとりの肌データを採集する」というこの取り組みは、創立以来スキン研究に取り組んできた資生堂だからこそできるテーマです。
「Creative Capital」を起点としたプランニング
鈴木:日本社会って、まだまだいろんなところに偏見がはびこっていますよね。たとえば最近は学校にも多国籍な子どもたちが増えているのに、彼らに偏見のまなざしを向ける風潮があって、日本の学校には「いじめ」もたくさんある。子どもたちに体験を通じて正しい知識を伝え、「世の中には様々な人がいるんだよ」ということを理解してもらいたいと考えました。
白石:まさにブランドエクスペリエンスですね。このプロジェクトを経験した子どもたちは大人になったら、資生堂のロイヤルカスタマーになるような気がします。
鈴木:大切なのは、クライアントのこうした「戦略的アセット」つまり、強みをしっかり生かすソリューションを想像し、創造することだと思っています。
白石:そこがR/GAの得意とする「クリエイティブ」の部分なんですね。
鈴木:そうです。クリエイティビティは広告のためだけではなく、組織のすべての領域に注入することが必要です。これを僕たちは「Creative Capital」と呼んでいます。企業に対して彼らの強みを生かした、つまり「Creative Capital」を起点としたビジネスプランを作って支援するのが、R/GAのやり方です。そこをディスカッションしていくなかでたどり着いたテーマが、ダイバーシティでした。
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石川 香苗子(イシカワ カナコ)
ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。
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