導入のハレーションを乗り越え、AIをビジネスに貢献させるために
DataRobotによるスコアリングの切り替えの結果、どのようなビジネスのインパクトにつながったのだろうか。SansanではDataRobotとMarketoによるデータ連携について、3つのフェーズを経験したという。
揺り戻し期:インサイドセールス側としては架電リードは自分たちで決定したい。Marketoベース・DataRobotベースに関わらず、スコアリングというマーケ依存の仕組み自体を撤廃する流れに……。
共存期:AIの助けがあって初めて実現できるフローを見つけることで、人の判断とAIの判断の共存を実現。
「当初は過去の架電結果をすべて学習したDataRobotから作成された、アポ獲得率の高いリストを、インサイドセールスに激推ししていました。しかし、『DataRobotで低いスコアだったからと言って、架電しないのはちょっと嫌だ』という反応がインサイドセールスからは返ってきてしまい……。インサイドセールスにとっては、いきなりAIでの予測モデルと言われてもなかなかピンとこず、架電のモチベーションが上がりにくかったんです。つまり、AIによる予測モデルに人の意思を入れ込む余地がないことが、導入に際してのハレーションを生んでしまいました」(新名氏)
導入当初からAIの予測モデルによるインサイドセールスの効率化は運用に乗ったとは言いがたい状態だった。そこから「揺り戻し期」となり、インサイドセールスからはスコアリング自体もう必要ないと言い渡されてしまったという。結果、インサイドセールスではこれまでの成功体験をもとにした架電が行われた。そうすると、再び架電対象にならないリードが増え、重要なアクションも見逃している可能性が高くなる状況に逆戻りだ。
「2つのフェーズを経験してわかったことは、事実としてAIの精度がよくても、モチベーションにはつながりにくいということ。いきなりAIドリブンで飛ばそうとするのは非常に難しいので、行動の判断は人に任せて、そのヘルプとしてAIの判断がヒットする場所を探す必要があるなと思いました。
具体的には、サイトを再訪問している過去に獲得したリードという、架電する理由は十分強いが、すべてに対応するには効率が悪いリードに対してAIがふるいをかけることで効果的な架電対応を可能にしました」 (新名氏)
このAI共存期における最適なAIの活用法を見つけた結果、アポ獲得率は約2倍に改善し、総受注額もDataRobotライセンス費用を上回ったという。ビジネス的にも、ペイできたと言えるだろう。
「人が関わるフローの一部にAIを導入しようとすると、どんなに準備して話を通していたとしても、ハレーションが必ず起きるのではないかと思っております。しかしそこで諦めないでください。AI だからこそ解決できるテーマはどこか必ずあるはずなので、そこを辛抱強く探っていくことが大事なのではないでしょうか。弊社の事例をそのヒントとしてご提供できたのであれば嬉しいです」(新名氏)