目の前の果実を刈り取ることだけに意識を取られていないか
三浦:「見えないものを視る」ことって本当に重要だと思っていて。特にデジタルマーケティングに携わっている人は注意した方がいい。デジタルマーケティングは、良くも悪くもすべて数値化されます。そうなるとどうしても数値だけを追いかけがちになるけど、そのままでは目の前の果実しか食べられないんです。
マーケティングって、「市場刈り取り」と「市場拡大」の2つでできているんですよね。目の前の数値だけを追いかけ続けている限り、市場刈り取りしかできないわけです。
市場拡大するには、数値だけでは見えない何かが必要。たとえば、自分がかっぴーさんの漫画作品「左ききのエレン」のプロモーションを担当するとします。普通に考えると、大手広告代理店に勤めるクリエイター朝倉光一をめぐる群像劇なわけだから、興味を持ちそうな広告業界の方をターゲティングしますよね。でもそれだけでは広がる範囲は限られます。
その「範囲」を乗り越えるのは、数値化できないコンテンツのおもしろさだったり、作者であるかっぴーさんの熱量なんですよ。あの漫画は、天才になれなかった人の葛藤を描いている。広告業界の話じゃなくて、多くの人の感情に訴えかける物語なんです。
だから今、テレビドラマ化したり、紙の単行本制作プロジェクトのクラウドファンディングでは調達額が5,300万円を突破したりと、広告業界という狭い範囲を軽々飛び出していけた。
かっぴー:クラウドファンディングで5,300万円突破した時は、作品の広がりを感じましたね。CAMPFIREを利用したのですが、CAMPFIREのこれまでの調達金額ランキングでは11位、漫画部門では1位だったんです。マスコンテンツに近づいているなと実感しました。