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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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顧客起点のビジネスはどう実施する?インバウンドの思想を取り入れた成功事例(AD)

“検索体験”の最適化を目指す HubSpotが提唱する新SEO手法「トピッククラスターモデル」とは?

 近年のSEOにおいて、Googleは「E-A-T」(専門性・権威性・信頼性)を重視している。納得感のある方針ではあるが、すべてのコンテンツでこれらを徹底するのは容易ではないだろう。そんな中、HubSpotは新しいSEO手法「トピッククラスターモデル」を確立し、米国本社およびHubSpot Japanの日本語ブログを大きく伸長させた末、クライアント企業への提供も開始している。このモデルの有用性、またHubSpot日本語ブログを伸ばした経緯について、HubSpot Japanの向井拓真氏に取材した。

インバウンド手法を支援する「HubSpot Marketing Hub」

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、向井さんのご経歴と現在の担当領域をうかがえますか?

向井:前職で、BtoCアプリのグロースハックを担当した後、2年前にHubSpotに入社しました。最初の1年間はカスタマーサクセスチームに所属し、「HubSpot Marketing Hub」(以下、Marketing Hub)をはじめとするHubSpotの各種ソフトウェア導入企業様のビジネス成功を支援する立場でした。また、自社のBtoBマーケティングの一環として「カスタマーサクセス」をテーマにHubSpotブログの執筆も行っていました。

 その経験から、翌年に現在のマーケティングチームに異動。ブログの運用にも中心的に取り組むようになり、ちょうど1年が経ったところです。今はコンテンツ制作やSEO、CRO(コンバージョン率最適化)に取り組んでいます。チーム全体で追っているリード数やクオリファイドリード数に寄与することがミッションです。

 HubSpot Japan マーケティングチーム マーケティングマネージャー 向井拓真氏
HubSpot Japan マーケティングチーム マーケティングマネージャー 向井拓真氏

MZ:では、Marketing Hubの概要を教えてください。

向井:Marketing Hubは、インバウンド手法を実践する上で必要な機能を、企業の状況や体制に合わせて柔軟に選択できる製品です。インバウンド手法とは、価値ある良質な情報を提供することで見込み客を惹きつけ、関係性を築き、満足させていくマーケティング、営業、カスタマーサービスの手法です。この手法に則ったマーケティング活動は「インバウンドマーケティング」と呼ばれます。HubSpotに入社する前は、Marketing Hub=マーケティングオートメーション用のソフトウェアというイメージがあったのですが、実際にはその言葉から連想されるよりもずっとたくさんの機能と用途があることに驚きました。

 たとえば、いわゆる「マーケティングオートメーション」で連想されるワークフローに基づいたEメール配信機能はもちろんのこと、リード数の獲得が課題であればセグメントメール配信やLP制作などの機能、マーケティング施策の効果測定が課題であれば広告出稿・分析機能やアトリビューションレポートによる施策の寄与分析機能、自社の見込み客・顧客のフェーズに合わせた情報提供を行うためのシナリオ分岐など様々なものを備えています。無料から最上位のエンタープライズ向けプランまで、計4つのプランを提供しており、ユーザー企業が自社のニーズに合わせて選択できるようになっています。米HubSpotが確立したSEO手法の「トピッククラスターモデル」も、Marketing Hub上で導入できます。

米HubSpotで課題だったブログトラフィックの伸び悩み

MZ:「トピッククラスターモデル」は、米HubSpotでも日本でも大きな成果を上げ、現在既に国内の複数企業で高いSEO効果を発揮しているそうですね。そもそも、なぜ米HubSpotでこうした新しいSEO手法が開発されたのですか?

向井:近年、SEOにおいてはGoogleが基準としている「E-A-T」(Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、Trustworthiness:信頼性)が注目されており、コンテンツの品質がより問われるようになっていると認識しています。Googleは3つの要素を通じ、独自性が高く、「読み手にとってより価値のあるコンテンツ」を検索の上位掲載する仕組みを構築していると考えられます。とはいえ、この3つを個別記事や記事群に徹底させるのはなかなか難しく、米HubSpotのブログでもトラフィックが頭打ちの状態でした。

 そこで3年ほど前、SEOのエキスパートチームが発足し、トラフィックの伸長とリード獲得に戦略的に取り組むようになりました。具体的には、製品に直接関係のあるキーワードを洗い出し、それらを「トピック」という概念でひとくくりにすることを発案しました。これが、「トピッククラスターモデル」の発端です。

「トピッククラスターモデル」の概念図

向井:簡単に説明すると、上図のような親子構造でひとつのトピックを網羅するモデルになっています。たとえば「カスタマーサクセス」というトピックなら、検索ボリュームを元に複数のキーワードを組み合わせて「カスタマーサクセスのKPI」「カスタマーサポートとの違い」といった子記事(クラスターコンテンツ)を制作し、そこからの被リンクを集約した親記事(ピラーコンテンツ)をまとめページとして据えています。

MZ:トピックでくくると、何がいいのですか? これまでのコンテンツマーケティングで定石だったページ構造と、どう違うのでしょうか。

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サーチ“エクスペリエンス”を最適化するという発想

向井:これまでのコンテンツマップやキーワードマップと呼ばれる記事構造は、基本的に大きな切り口のキーワードから徐々に細かく分岐していくような構造になっていました。トピッククラスターがユニークなのは、まず大きな切り口のキーワードを“トピック”と定義して親記事を置き、それに関連するキーワードを含む各記事を図のように円形に配置して、被リンク構造を構築することです。

 こうすることで、トピック全体の権威性が向上し、リンク構造が強化され、同時にカニバリも防止されます。MECE(ミーシー)といいますが、漏れがなく、かつ重複のない構造体を作りながら、ユーザーの課題に対して網羅的に解答を用意しておけるんです。公開の順番も重要で、子記事をまずアップしていって徐々に順位が上がると、最後に親記事を出した際に被リンクを受けている親記事がぐっと上がる……という動き方になります。

90秒でわかる「トピッククラスターモデル」

MZ:こうした構造と順番が、クローラビリティの向上につながるということでしょうか?

向井:おっしゃるとおり、機械的にクロールしやすくなりますね。併せて、ユーザビリティも大きく向上します。私見ですが、今後のSEOはサーチエンジンオプティマイゼーションではなく“サーチエクスペリエンスオプティマイゼーション”、つまりユーザーの検索体験を向上させるという概念の下に進めるほうが、よりGoogleに評価されるのではと思っています。検索体験が向上すると、より読者にとって分かりやすく、価値を感じられる記事が検索の上位掲載され、その結果としてその記事への流入が増え、リード数も向上します。ロボットとユーザー、両方の観点でコンテンツを最適化していけることが、トピッククラスターモデルの大きな特徴です。

トラフィック7倍を実現した「トピッククラスターモデル」

MZ:なるほど。だから、大きな成果が上がっているわけですね。

向井:そう考えています。実際、米HubSpotではこの方法で大きくトラフィックが伸びました。その成功を踏まえて、Marketing Hubのユーザー企業にも同様の概念と方法を提供するために、対外的なモデルの発表と、Marketing HubのSEO機能の刷新を進めました。現状では、Marketing Hub上で簡単に前述のキーワードの洗い出しや、構造の整理、抜け漏れの確認などができるようになっています。

 また、昨年春からHubSpotの日本語ブログにも適用して、1年間でトラフィックが約7倍になっています。

MZ:日本でも、わずか1年でそんなに伸びたんですね。その要因をどうお考えですか?

向井:まず、このモデルがグローバルで適用できる強力なコンテンツ戦略である点が大きいと考えています。もうひとつは、ローカル市場に合わせた工夫をすることで、さらに威力を発揮する点です。いくらトピックがきれいに体系立てられていても、ネット上に既にたくさんある情報だと引きが弱いので、日本なら日本の市場でどこまでオリジナリティの高い情報を出せるか、独自の主張があるか、BtoBであっても読み手に驚きや感動を与えられるか、といった点が重要になってきます。

MZ:記事のオリジナリティや独自の主張、といった部分を担保するために、どのような工夫をされたのでしょうか?

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各記事の構成、伝えたいメッセージをはじめに作る

向井:リサーチに徹底的にこだわりました。トピッククラスターモデルの運用自体は、外部パートナーやライターさんなどを含めた分業で行うこともできますが、独自性を担保するためには、読み手のペルソナや提供すべき情報、それら情報を関係者間で確実に共有しておくための記事構成案などを自社でしっかりと事前リサーチし、確定しておく必要があります。ブログの責任者がオーナーシップを持った上で、関係者と協業していくことがうまくいくポイントだったと思います。

 そこで、HubSpotではグローバル共通でサーチインサイトレポートというスプレッドシートを活用しています。このスプレッドシート上で書く順番や原稿のアウトラインなどを管理し、社内外のライターさんへのアサインや工程管理を行っています。

 そうしたオペレーション的な部分と合わせて、やはり先ほど図で紹介したような新しいコンテンツ構造の概念を丁寧に関係者に共有していったことも、成果が得られた要因だと考えています。これらの直近のブログ運営プロセスは、ナレッジとしてHubSpot Japanのカスタマーサクセスチームが各クライアントのインバウンドマーケティングを支援する上でも役立っています。

「サーチインサイトレポート」イメージ(※文末のリンクから無料テンプレートをダウンロードできます)
「サーチインサイトレポート」イメージ
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MZ:今、Marketing HubのSEO機能としてトピッククラスター戦略を実践する機能を提供しているのですよね。実際に自社ブログを伸ばしてきた向井さんの視点で、企業のマーケターがこのモデルを取り入れる際に何が肝心だと思いますか?

向井:単に“モデル”や”ツール”を機械的に導入する感覚だと、なかなか難しい部分があると感じています。そうではなく、このモデルの構造と概念、記事の読み手に与えるインパクトを理解して、外部のチームにもそれを共有していくことが重要だと思います。それは簡単ではないのですが、たとえばHubSpotのユーザー企業様であればカスタマーサクセスをパートナーとして、また使い倒す姿勢で臨んでいただくことで、成長への抜本的な道筋が描けるはずです。

インバウンドで獲得したリードは質が高い

MZ:企業のトピッククラスター運用で、具体的な成果が現れているケースはありますか?

向井:当社のブログでも紹介していますが、外国籍の人材を採用したい企業がオンラインでビザ取得と管理を行える「one visa」を提供する、one visaさんのケースはひとつの好例です。新卒で、しかも他の職種と兼任の担当者さんの下で、立ち上げたばかりのオウンドメディアをPVベースで154倍に成長させ、見込み客獲得に繋げられています。我々もこうした場面に立ち会えて、とても光栄です。

MZ:それはすごいですね! トピッククラスターの活用で、トラフィックの向上のほかにどのような定量的な成果、また定性的な成果が期待できますか?

向井:トピック別のセッション数とリード転換率をそれぞれ把握できるので、最終的な売上目標から逆算して各施策のマーケティング判断ができます。また、トピックごとの流入数を踏まえて、たとえばブログ内容を活かしたホワイトペーパーの企画などのスピードも上がります。

 定性的な成果では、1つのトピックに対してある程度の本数を同時期に執筆するので、知識の横展開がしやすく、記事の品質向上につながりますね。

MZ:最後に今後の展望と、インバウンドマーケティングを強化したいマーケターの方にメッセージをいただけますか?

向井:コンテンツが溢れている時代なので、独自の経験に基づいた専門性が高い情報を、いかにコンスタントに発信できるかが重要になってきます。また、マーケターという立場だからこそ、ユーザーの解像度を上げるためにユーザーとの接点を保ち続け、ユーザーの生の声を聞き続けられるのかが大切です。

 結果的に、ユーザーに寄り添いながら、まずは見返りを求めずに、価値の高い情報をGiveしてユーザーの課題を解決する姿勢が、インバウンドマーケティングを成功させる上では最も大切な考え方なのではないかなと思います。HubSpotとしてはその過程に伴走して、企業のビジネス成長に貢献していきたいと思っています。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/20 10:23 https://markezine.jp/article/detail/33507