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「契約のかたち」を根底から変える、リーガルテックのHubble酒井氏に聞く「OneNDA」の可能性

ビジネスのコミュニケーションを再設計する

――OneNDAを通じてNDAを交わすメリットを高めるためには、より多くの会社に参画してもらう必要がありますね。

酒井:参画者が増えれば増えるほどOneNDAが適用される場面が増えていくので、より大きな効果が出てくると思います。そして、そのために、誰でもルールの内容がわかりやすい状態も作りたい。OneNDAの統一ルール自体は、契約書のようなかたちで記述して公開しますが、それとは別に、参画者、参画希望者が理解しやすいような解説、平易な文章で書いた説明書みたいなものを付けようと思っています。

――OneNDAも「リーガルテック」のひとつと考えていいのでしょうか。

酒井: OneNDAはHubbleのプロジェクトのひとつでありますが、特に「リーガルテック」にカテゴライズするようなものでもないのかなと思っています。というのも、僕たちはHubbleのミッションとして、「契約を再デザインし、合理化して新しい働き方を支援する」ということを掲げているからです。

 仕事をするときに、人どうしのコミュニケーションはとても大切です。個人対個人のコミュニケーションの手法は、近年大きくアップデートされました。メール以外に、チャットツールとしてLINE、Messenger、Slackなどが登場したり、ビデオツールも登場し、個人間でのコミュニケーションはどんどん円滑になっています。じゃあ法人どうしのコミュニケーションはどうかというと、あまり大きなイノベーションは起きていない。その最たるものが「契約」なんじゃないかと考えています。

 契約というのは、法人と法人のコミュニケーションそのものです。それなのに、契約書を見ると、堅苦しい文章で、法務担当者とか弁護士しか理解できないようなものになっている。僕たちが「Hubble」というシステムを1年半ぐらい前に立ち上げて、契約書の管理や共有をスムーズにしていった結果、大企業にも採用されることが増えてきました。「Hubble」によって契約を円滑にすることには大きな価値があることを再認識できましたし、企業間コミュニケーションのあり方を変える可能性を感じています。

これから求められる「リーガルマインド」とは

――2017年に弁護士の水野 祐さんが『法のデザイン』という本を出版されたときに、法律の世界に新しい考えを持った人たちが出てきて、これからいろいろ変わっていくんだろうなと感じていました。最近では、弁護士事務所の方々もBtoBマーケティングの勉強を熱心にしていますよね。

酒井:弁護士の数が増加したこともあり、市場の競争原理が働き始めたということが言えると思います。また、他の業界で最新のツールを利用したマーケティング手法等が体系的に整理されたり、ノウハウが蓄積されていく中で、それをこの業界にも応用できないかと考えている弁護士の数も増えていると思います。リーガルテック等によって業務がデジタル化されていけば、属人的であった業務から、これまで行うことができなかったデータドリブンなかたちでの業務、組織運営が可能になってくる。今後もこのような傾向は進んでいくと思います。

――MarkeZineの読者には、新しい事業、新しいサービスやプロダクトを作ろうとしている人たちがいます。新しいビジネス領域にチャレンジするときに、法律の専門家がプロジェクトに参加して、コラボレーションしていくことも重要になりそうですね。

酒井:そういう動きは実際にあると思いますし、すごく必要だなと思っています。広い視点で言うと、日本では労働人口が減っていく中で、どのように国際的な競争力を維持していくかというと、ひとつは日本からグローバルで勝負できる企業が生まれること、もうひとつは海外の成長企業を買収する、という2軸で考えていくことになります。

 そのいずれの手段でも難しい法的課題に直面します。特にグローバルサービスや本当に新しいサービスを世に送り出そうと思ったら、当然、既存の規制をどうクリアするかを考えなければいけない。一方で既存の規制のほとんどは、インターネットがない時代に作られたものばかり。昔の法律ではカバーしきれない未知の領域で新たなビジネスにチャレンジしていくためには、リーガルパーソンもそこにコミットする必要があります。

 法律というものを「守る」ものから「ビジネスを実現するための手段」として考えていく。そういうマインドチェンジが起こったことによって、「法」や「ルール」に対する考え方がアップデートされたのではないでしょうか。これからのリーガルパーソンに求められるのは、昔の人たちが考えたルールの趣旨もしっかり踏まえながら、現在の社会に適応するように解釈してルールを使っていくこと。ルールを踏まえながら創造的に考えていく力、それが「リーガルマインド」なのだと思います。

――OneNDAの今後についてはいかがですか。

酒井:OneNDAプロジェクトの成功のカギは、法務部や弁護士を巻き込むことはもちろんですが、ビジネスサイドにいる人たち、マーケターやエンジニアみたいな人たちが「こういうものが自分たちには必要だ」と意思表示をしていただくこと。あらゆるポジションの人と一緒に、大きなムーブメントを作っていきたいです。

――酒井さんは弁護士として働いていた頃と比べて、Hubbleでのお仕事をどう感じていますか。

酒井:友人にもよく聞かれるのですが、僕がはっきり胸を張って言えるのは、いまが人生で一番ワクワクしているっていうことですね(笑)。

 はじめて直面する問題も多く、大変なこともありますが、完全にビジネスを行うプレーヤーとして動いている実感があり、すごく刺激が多いです。ポジションが明確に異なっていて、自分が正しいと思う価値観の実現や世界を作ろうとすることに集中できますし、「世界はこうあるべきだ」ということを表現していくと、周りから「すごい」「いいね!」と反応が返ってくる。Hubbleも優秀なメンバーが集まっていますし、人生においてこういうチャレンジができる機会はなかなかないと思っています。なので、いまはすごいハッピーですね。

――お話をうかがって、法律というものがビジネスにおいて非常にクリエイティブに働く可能性があるということを感じました。ありがとうございました。

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井浦 薫(編集部)(イウラ カオル)

MarkeZineで主に書籍を作っています。
並行して、MONEYzineにも力を入れています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/08/07 11:00 https://markezine.jp/article/detail/33795

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