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米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』

特需後のテレビ業界 テレビCM買い付け経路のOTTシフト

テレビCM広告費をオンラインでの取引に

 米国市場に上場するDSP企業「The Trade Desk」(以下、TTD)をご存じだろうか。COVID19の状況下でも、状況以前の株価を更新し続けている(図表1)。

図表1 米DSP企業「The Trade Desk」の株価推移(タップで画像拡大)
図表1 米DSP企業「The Trade Desk」の株価推移(タップで画像拡大)

 アップフロント中止とライブスポーツ中止でリニアTV局経由の広告予算を止めた広告主が、機動力あるOTT枠(Connected TV枠※2)にTTDのDSP経由で予算を向けた。おかげでTTDのConnected TV取扱高の前期比伸びは100%になった。

 TTDのジェフ・グリーンCEOは「すべてのテレビコンテンツへの広告はネット経由配信による『Connected TV広告』にシフト」し「リニアTVの(商取引の)終焉」と明言している。この時期になんとも勢いのあるコメントだ。

 TTDは企業価値約2兆円、社員数約1,300人にてグローバルアカウントを持つ。このようなDSPの存在は日本の状況と比較できないが、「機動力あるテレビCM枠をオンライン上で取引する示唆」という解釈では、日本の現状でもオンラインを介する商取引が生まれつつある部分においてヒントになる。

 今年2月に日本で発表された、日本テレビ・フジテレビ・TBS・テレビ東京など一部の民放局による、テレビスポットをオンラインで1枠から購入できる「SAS」のシステムは、ようやく米国の上記の状況に一歩近づいた兆しだ。

※2 テレビ放映電波やケーブルテレビ経由のテレビCM枠だけでなく、OTT電波回線経由でスマートテレビ向けに配信されるテレビCM枠

広告素材の「考査」を味方につける新たな投資領域

 ところで、テレビ業界にはテレビ局へ入稿する広告素材の「考査」というプロセスによってブランドセーフティーが保たれている(ネット業界ではゆるい)。これがブランドを毀損させない防波堤であり、容易に無名ブランドが入稿できなかったハードルでもある。この分野への知見を持つ企業(テレビを扱う代理店)が、「機動制作ノウハウ」を積み上げた制作会社と準備できれば、「次の中止の波」が来たときには、さらなる大きな価値を持つ可能性がある。

 TTDの隠れた強みは前出「Pluto TV」のようなOTTでのコンテンツ集約配信社への接続だけでなく、直接Amazon・Disney・Warner Media・Comcast・Hulu・Rokuなどのストリーミング大手からの広告在庫を販売する第一人者としての「考査を含めた」信用契約を結んでいる点だ。テレビの優良広告枠のオンライン売買取引について、指定プラットフォームとして買い付け契約ができているということは、考査プロセスにおいてもテレビ局習慣への理解と体制を作ったことの表れだ。優良コンテンツを持つテレビ局と機動的に取引するには、単なるテクノロジーやプラットフォームだけでは解決できない、人的つながりを働きかけるかの差が生まれる。

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/27 15:15 https://markezine.jp/article/detail/33878

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