なぜデジマ業界では“車輪の再発明”が起きてしまうのか?
MarkeZine編集部(以下、MZ):垣内さんは、Webのデータ解析と改善提案ツール「AIアナリスト」などを活用したデジタルマーケティング支援の傍ら、産学連携型の研究所「WACUL テクノロジー&マーケティングラボ」を立ち上げるなど、業界全体でのナレッジの共有にも注力されています。
昨年株式会社セールスフォース・ドットコムが開催した「Pardotお客さま感謝祭」では、「デジマ業界では“車輪の再発明”が繰り返されている」と指摘されていました。まず、なぜそのような事態に陥ってしまうのか、うかがえますか?
垣内:主な原因は、デジタルマーケティングに詳しく、社内事情にも精通している人がいないことだと考えています。特に大企業では、デジマに注力する場合に専門部署が新設されて未経験の方が担当したり、外部からCDOが招聘されたりすることがありますが、前述の2つの条件を満たせないケースが多いですね。
垣内:とりわけBtoBマーケティングでは、営業部門との連携がとても重要です。それなのに、若くてデジタルに詳しそうという理由で社内から集められた人や、たとえデジタルに詳しくても自社製品と顧客の関係性が見えていない人がハンドルを握ろうとしても、なかなかうまくいきません。一方で目に見える成果は求められるので、焦りからバズワードや流行りのツールに踊らされるという残念な事態も起きています。
MZ:それは、日本企業の独特の風潮でしょうか?
垣内:そういう部分もあるでしょうね。これまで見聞きしたケースを分析して図にしたのが以下ですが、ジョブローテーションなどの影響もあると思います。
18種類の分類それぞれに「勝ちパターン」がある
MZ:ただ、デジタルにも社内事情にも精通した人材を確保するのは、そう簡単ではないですよね?
垣内:そうですね。なので、その部分を「勝ちパターンを知る」ことで補完し、誰もが最短距離で成果を上げられるようにしていきましょうと、いつもお伝えしています。
デジタルマーケティングは新しい領域とはいえ、既に相当のナレッジが蓄積されており、特にWACUL が長く支援しているCV獲得型のWebサイトなどは既に勝ちパターンが明らかです。近年ではそれに加えて、MAやAIといった最新のテクノロジーもツール化されて利便性が高まっているので、「デジタルで効率化すべき点」と「人が担うべき点」を押さえれば、成果を上げるのはそう難しくはないのです。
MZ:その勝ちパターンについて、詳しく教えていただけますか?
垣内:デジタルマーケティングの勝ちパターンは、実はわずか18種類に絞られます。
デジマって、やろうと思えば細かいところまで無限に施策がありますよね。でも、もちろんリソースは有限なので、最もリターンが見込める部分から投資していくべきです。そのためには、まず自分たちの事業の特性を明確に知る必要があります。それは「Webで完結するのか/営業担当を介するのか」の二択から始まり、図のように18種類に分類されます。このそれぞれに、勝ちパターンが既にあるので、最初にそれを踏襲してからチューニングを図るのが最も効率的です。
『デジタルマーケティングの定石』が本日発売!
今回お話を聞いたWACUL垣内さんの著作『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(日本実業出版社)が本日発売となりました。これまで垣内さんが蓄積してきたナレッジを詳しく学べる内容になっていますので、記事と合わせて読んでみてはいかがでしょうか。