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定期誌『MarkeZine』特集

複数のシナリオを想定し、打ち手を多く持つ ニューノーマル時代のブランドに必要なこと

 数ヵ月に及んだ外出自粛期間は、オンライン会議や在宅勤務、ECのすそ野の拡大といった複数の変化を私たちの生活にもたらした。そしてその少なくない部分が、このまま定着することが予想されている。行動様式や価値観が転換する際、ブランドはどのような観点でコミュニケーションを図ればいいのだろうか?また、ニューノーマル時代に求められるマーケターのスキルとは?マーケターキャリア協会の理事でもあるニューバランスジャパンの鈴木健氏に、コロナ禍の自社の動きを交えて解説いただいた。

※本記事は、2020年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』56号に掲載したものです。

米国内の自社工場でマスクの製造を開始

ニューバランスジャパン マーケティング部 ディレクター 
鈴木健(すずき・たけし) 氏

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランスジャパンに入社し、現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティング・コミュニケーション全般を担当。2017年から2019年はDTCビジネスの直営店とEコマース事業も統括。2020年からマーケティングディレクター。

――鈴木さんは長くニューバランスジャパンのマーケティングマネージャーとして、マーケティング全般の統括をされていました。まず、このコロナ禍をブランド全体や日本法人でどのように受け止め、どんな動きがあったかをうかがえますか?

 グローバルのスポーツブランドとしては、スポーツ業界全体で「いよいよオリンピックイヤー」という機運が一気に消えたインパクトが大きかったです。延期の決定前から、もしも開催になっても状況は厳しいというムードがありました。

 日本では、2月末を境にかなり意識が変わりました。米国での新型コロナウイルス感染者が急増した3月から、ニューバランスも世界的にリモートワーク体制になりました。そのときの感覚は、新型コロナウイルスの脅威が生活にどういう影響を与えるのか、不安がいちばん強かったと思います。最初のブランドアクションとしては、ビジネスというよりも従業員向けのメッセージが発信されました。

 インターナルに従業員の安全の確保を最優先とするとともに、外に向けてブランドの社会的な存在意義を改めて示すこと。私のマーケターとしての経験からも、危機に陥ったときに最初にやるべきは、このようなチームに対するリーダーシップの発揮だと思います。

――米ニューバランスでは、4月上旬に米国内の自社工場で医療用フェイスマスクの開発・製造を開始しました。この件は米国内のみの動きだったそうですが、日本でもSNSなどで注目を集めていました。

 このブランドアクションは、社会的な存在意義に真摯に向き合って生まれた行動だったと思います。医療機関で感染の対応に追われる方々のためのパーソナル・プロテクト・エクイップメント、PPEと呼ばれる物資が足りないことを受けて早急に自社でできる支援を模索し、その形がマスクだったわけです。

ニューバランスが発表したマスク
ニューバランスが発表したマスク

 これはビジネスあるいはコマーシャルの活動ではないので、発信する内容が誤解されないように注意はしました。グローバルブランドとしての姿勢の表明なので、日本ではSNSでお知らせしました。スポーツ業界では、寄付活動も含めて同様の行動が前後してあったものの、目に見えるアクションを取ったのは弊社が早かったこともあり、多くの方々に知っていただけたと思います。

運動不足を解消したい気持ちを捉えた施策

――一般の方々に、とても好意的に受け止められていたと思います。

 ソーシャルリスニングを通して、我々の姿勢は一定量伝わっていたことは確認しました。一方で従業員が勇気をもらえるアクションでもありました。ニューバランスはこうした危機下でも、社会で果たせる意義を見出してすぐ行動に移せる会社であり、それが世の中にしっかりと受け止められているとわかると「この企業に所属していること」に安心感を得られる。日本国内には直接関係のない動きだったとしても、ブランドが“正しい”見え方をしたと感じています。これがニューバランスにおける第一段階の動きです。

――第一段階の、いわば“初動”的な時期を経て、4月あたりからはこの状況下でのビジネスも模索され始めたと思います。第二段階としては、どういった動きがありましたか?

 前述のリーダーシップの下、コロナ禍はすぐには終息しないことも含め、緊急モードのビジネスとして数ヵ月をどう生き残るかを考えていきました。これは一消費者の立場としても同じですね、皆さん急激な環境変化に戸惑いながら、生活を立て直そうとされていたと思います。特に日本の場合、新型コロナウイルスの感染拡大時期が春先である年度の変わり目で華々しい時期です。それがそっくり失われ、緊急事態宣言が打ち出され、消費者のセンチメント(市場心理)としても相当冷え込んでいることがうかがえました。当然、強いマーケティングメッセージを発信するタイミングではないので、変化を見つつ、できることを文字どおり1日ごとに探っていました。

 具体的に実施したことのひとつは、アスリートにリモートで協力を得た、家でできるエクササイズやフィットネスの提案です。やはり家にこもっていると運動不足になるので、それを解消したい気持ちを捉えました。また、アスリートに励ましのメッセージをもらうことで、家の中でふさぎがちな気分を上げる意図もありました。

アスリートたちによるエクササイズを動画で公開(タップで画像拡大)
アスリートたちによるエクササイズを動画で公開
(タップで画像拡大)

 一方、元々の予定を大きく変えなかった施策もあります。まだコロナ禍が本格化する前の2月末に開催されたパリのファッションウィークに、ライフスタイル系の新作シューズである327をいち早くランウェイで発表していました。その後、店舗では休業のため販売できませんでしたが、ECに切り替えたところ、ネットの情報発信も奏功して外出自粛期間中にとても評判になり好調に販売につなげることができました。小売業がどこも厳しくなる中、このような評価はニューバランスの元気さや強さを印象付けましたし、社内の活性化にもつながりました。もちろん全店舗の売上の落ち込みをカバーしたわけではありませんが、この時期のECは単体で見れば通常時より大きく貢献しました。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:48 https://markezine.jp/article/detail/34062

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