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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

今後のクリエイターに求められる領域横断

NHK紅白歌合戦で実現した新たな表現の仕組み

――これまでの取り組みで、お話しいただいた考え方が反映された企画はありますか。

 我々にとって転機となったのが、2018年の「第69回NHK紅白歌合戦」での取り組みです。この取り組みではバーチャル上にステージ美術を表現する「シンクシステム」を開発したのですが、アジャイル型かつアセット側の開発が成功した事例になります。

 最初、NHKの照明の方から「既に照明業界で標準的なシミュレーターとして広く使われているライトコンバース以上にリアルなソフトが作れるものか」と意見されましたが、照明機材とPCを接続し、普段の照明を動かす感覚でバーチャル上の演出ができ、かつ限りなくリアル空間に近い表現のできるシステムを開発しました。

 これまでセットの転換に時間がかかるため、各アーティストの世界観に合わせた表現には限界がありましたが、シンクシステムを活用することでステージ美術を映像で代替させることができるようになりました。

NHK紅白歌合戦で使われたバーチャル上のステージ美術
NHK紅白歌合戦で使われたバーチャル上のステージ美術

――バーチャル上にセットはあるけれど、視聴者からしたらリアル同様の体験が得られるんですね。驚きました。

 このプロジェクトは、クリエイティブコンプレックスの肝に当たります。同じ放送技術でも、照明と音響だけでまったく異なる領域です。先ほどデザインとプログラミングの両立の話がありましたが、LED上の映像演出と舞台照明の演出の間にも、ワークフロー上どちらかを優先してプランニングせざるを得ない部分がありました。

 しかし、シンクシステムというテクノロジーによって映像と照明のダイナミクスやカラーリングを一致させることを可能にしています。

ライブから空港デザインまで様々なものを企画

――その他にはいかがでしょうか。

 2つあって、1つは2020年6月24日に動画配信プラットフォーム「SUPER DOMMUNE tuned by au5G」で行った、アーティストDAOKOさんによるARの演出を取り入れた配信ライブです。

 これまでライブでARなどの技術を活用するには、1台数千万する放送用のシステムを借りる必要があり、コストが見合わない状況でした。そこで我々は、その数十分の1の値段で導入可能な画像認識で空間座標の取れるカメラを活用しました。そうすることで、コストを下げながら放送領域で行われていた高度な表現をライブでも行えるようにしました。

 昨今ARを表現に組み込む企業さんも多いですが、多くはiPhoneのARキットによるものです。これだとiPhoneの制約からは解き放たれません。そのため、我々は新しい表現の形を模索し、実現しました。

「SUPER DOMMUNE tuned byau5G」で行われた、アーティストDAOKOさんの配信ライブ
「SUPER DOMMUNE tuned byau5G」で行われた、アーティストDAOKOさんの配信ライブ

――コスト感を下げながら、ライブ体験を拡張しているのは素晴らしいですね。もう1つの事例についても教えてください。

 もう1つは、香港国際空港のコンペに参画したことですね。これまでも商業施設の演出などをご支援してきたのですが、この規模の公共施設は仕事のスケールが桁違いでした。

 かつ、公示から入札までの期間が2ヵ月と短い中で全ての施設計画を提出しなければならなかったのですが、建築、内装業界の仕事の進め方が参考になりました。具体的には、大きな会議室に数十名が集まり、複数のチームに分かれて数時間に一度他のチームと情報共有しつつ、企画の粒度を合わせていったのです。

 このワークフローは、普段携わる放送や映像、ステージ、空間の仕事にも活かせます。たとえばライブのステージプランニングなら、同じ部屋で照明などの話をしているメンバーやセットリストなどの進行を確認しているメンバーもいる。そして数時間たったらお互いの進捗を共有してプランを完成に導く。このように、業界特有のワークフローを横展開することのおもしろさを理解した事例でした。

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領域横断したスキルが求められる時代に

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/25 13:31 https://markezine.jp/article/detail/34085

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