広告は、生活や社会を豊かにする存在へ
では、コロナ禍という大きな社会変化を受け、広告はどうあるべきだろうか。
noteで「広告がなくなる日」を執筆する牧野氏は、これからの企業活動は社会課題に対する具体的なアクションや行動を加味した商品・サービス作りへシフトし、リソースや予算が生産へ投資されていくだろうと考える。そこに、従来の広告は存在しない。
「私たちの仕事は、商品と社会課題の間に広告などのコミュニケーションを通じてブリッジを架けることです。この社会課題と商品の何をブリッジしたらつながるのかを考え、成立させることが、醍醐味です」(牧野氏)
多くの人・時間・予算を費やすのに、短期間の露出で役割を終えるマス広告は、実に「もったいない」と主張。クリエイティブの力やクリエイターのスキルを、世の中に残る、またユーザーに還元されることへ活用するべきだと話す。
そして、マーケターやクリエイターが、目の前のPDCAを回すだけではなく、視座を高く企業のあり方や社会を考えていけば、世の中がより良い方向に変わる。「商品を売ることに、社会課題の解決につながることや、社会を良くする視点を足していくと、企業へ返ってくると思います。自分自身も、そんなチャレンジを続けたい」と牧野氏。
そして井上氏は、消費者視点から考えた広告の役割を語る。印象に残る広告に、マクドナルドのベーコンポテトパイの「ヘーホンホヘホハイ」(2018年)を挙げ、「楽しくておもしろい、そして“食べてみたい”のように、自然な消費行動を促す広告は好まれる」と話した。
また、店舗での接客や使われる言葉など、ユーザー体験の中で感じるブランドらしさも、一種の広告になると続ける。メディアの枠やクリエイティブだけが、広告ではないのだ。
「広告は、暮らしや社会を豊かにする手段の一部であり、そのような役割が求められると思います。一消費者として、そのような広告が増えていくと良いですね」(井上氏)
最後に2人は、「いつか教科書に載るような、社会にインパクトを残す企画に取り組みたい」と展望を語り、ウェビナーを締めくくった。