電話、Web、アプリ…各チャネルの購買頻度から見えたこと
一方で、外食産業にも様々な変化が生じていた。デリバリー市場は右肩上がりに成長しているものの、宅配ピザ市場に関しては横ばいの状況。宅配ピザチェーン間ではより熾烈な争いが繰り広げられるようになり、いかにお客様に振り向いてもらえるかが大きな課題になった。
また、それまでは対競合ピザチェーンに焦点を当てて戦っていたが、新たにデリバリー市場に参入する企業が増えたことで、宅配ビジネス全体を見ながら戦わなければいけない状況に変わっていた。
「今後生き残っていくためには、ピザをより日常に寄り添ったものにする必要があると考えています」と、薮内氏。世帯構造についても夫婦+子の世帯が減って単身世帯が増える形に変わっており、今後もその傾向が強まることが予想される。世の中の変化に対応するため、これまでの子ありファミリー層にターゲットを絞った戦略からの変更が求められていると現状を語る。
ところで現在、ピザハットの一人当たりの年間平均購買回数は2~3回だが、チャネルごとの購買頻度を見ると、電話からは1.8回、Webからは3.2回、アプリからは4.3回に。デジタルに注力すべき理由は、この数字にも表れている。

アプリのダウンロード数も年々増加していて、特に昨年夏にフルリニューアルを実施した後はダウンロード数、アプリ経由の受注件数ともに大きく伸びた。その理由として最も大きく貢献したのは、「プッシュ通知」でのお客様へのアプローチだった。
「2016年頃までは、ダウンロード数が増えても受注件数は横ばい状態が続きました。ダウンロードしてもらってもアプリを開くきっかけがなければ、すぐに埋もれてしまうことを痛感しました。いまはアプリがピザハットの主力のプラットフォームになりつつあります」(薮内氏)
第一想起はなぜ重要か?
薮内氏は次に、ピザハットが「第一想起」を重視するようになった背景として、注文のきっかけをアンケート調査した結果を紹介した。CMやチラシをはじめ広告からのきっかけ以上に、思い付き・習慣といった「想起集合」が全体の約4割を示した。

こうした世の中の変化から予算配分も見直し、旧態依然としたチラシ中心のプロモーションから脱却すべく、現在ではチラシからリーチ幅の広いテレビやターゲットに合わせた展開ができるデジタル広告に焦点を当て、予算をシフトしている。この先はさらにチラシを削減し、より効果が高いものにシフトしていけるよう対応中だ。
「ここ数年で劇的に生活環境が変化しました。どの業種にも言えることですが、常にその変化に素早く対応できるかが、ピザハットが生き残っていく鍵だと考えています」(薮内氏)
ファネルの中でおろそかにして良い部分はない
ピザハットでは第一想起してもらうための対応として、各タッチポイントを点で見るのではなく「線」で考えることを大事にしている。これはGoogleも提唱する考え方だ。
「これまではラストクリックモデルで、最後の接点に重きを置いていましたが、実際のところ、お客様が購買に行き着くまでには様々なタッチポイントでピザハットに接している可能性があります。そのため、費用対効果を鑑みながらではありますが、各ファネルのタッチポイントを増やして、全方位的に対応することが重要と考えるようになりました」(薮内氏)
現在は購買ファネルごとの目的に応じてターゲットを明確にし、チラシ、テレビCM、テレビパブリシティ、動画広告、ディスプレイ広告、各種SNSなど、多種多様な媒体に対応している。ファネルの中でおろそかにしてよい部分はない、というのがピザハットの考えだ。