BtoBマーケ部門に異動してもらうなら、どんな人?
栗原:引き続き、freeeの川西さんにお話をうかがいます。前編では、マーケティング部門には様々な仕事がある中、適切な人員配置が難しいという話が出ました。
前編「【マーケ反省会】freee川西さん×才流栗原さんが「二度と繰り返してはならない」と語る失敗」はこちらからお読みください!
今、多くの会社が営業やマーケのデジタルシフトに着手し、投資を増やしたり、部門を拡充されたりしていますよね。とは言えいきなりデジタルマーケターを大量に採用できるわけではないので、他部門からのコンバートも多いと思います。川西さんが考える、BtoBマーケティングにはこういう人が向いているという条件はありますか。
freee株式会社 執行役員/SMB事業部長 川西康之さん
東京大学法学部在学中に起業。以来10年以上にわたってWebマーケティング会社、システム開発会社、総合型地域スポーツクラブなどの経営に携わり2016年より現職。趣味は将棋観戦。
川西:freeeのようなビジネス領域についてお話すると、普段からユーザーとしてWebサービスやアプリを使い込んでいる人。そして自分でデータを引っ張ってきたり、基本的なコードを書いたりすることに抵抗がない人。この2つは、結構重要なのではないかと考えています。
どちらも、とにかく成果が出るまで執着して手数を打つぞというときに、不可欠な要素だと思います。初期ユーザーにどういうコンテンツを提供すると課金につながりやすいか考えようとすると、自分で50だったり100だったり、大量のアプリをダウンロードして体験するということを、平気な顔してできないといけない。
そして手数を多く打つためにはPDCAの「C」と「A」の部分が不可欠ですが、GAを使える人に「こういうレポートを出してください」とか、SQLを書ける人に「結果出してください」とお願いしているようでは遅い。スピード感を出すという意味で、データに抵抗なく触れられることは大切です。栗原さんが考える、適した人物像は?
栗原:とにかく手が動く人、実行力が高い人、エグゼキューション寄りのスキルセットの人がマッチすると思っています。アイデアや頭の良さで勝負がつくというより、やり切れないとか、執着できないとか、やるんだけれど遅いとか、こういうところが成果を出す上でボトルネックになっていると思うことが多いです。
逆に、手を動かせばなんらかの変化は起きるので、上向けば達成ですし、下向いたとしても、それは知見として溜まっていく。動かないことには、何も生まれません。
成長の裏で起こるマーケティングのガラパゴス化
栗原:次は、事業戦略、経営戦略という少し大きなテーマでおうかがいします。freeeさんは急成長中の企業としてよく知られていますが、攻めていく過程で感じていらっしゃる課題はあるのでしょうか?
川西:これはうまくいっていることの裏返しでもあるのですが、先ほどお話したような、手がよく動いて成果に執着して……というマーケターたちが獲得マーケティングを強化してきたことによる、マーケティングのガラパゴス化とでも呼べるような現象について、現在進行形で課題感を持っています。
興味関心を持っているお客様に、確実にユーザーになっていただくことは重要ですので、顧客セグメントごとにチームを分けて、より最適なユーザー体験を提供できるようにして、そこに適したマーケターを配置すれば、事業の成長がどんどん加速するはずだという発想でやってきたんです。
しかし、刈り取りだけをやっていたら、いつか成長は低減してしまいますし、freeeが掲げるミッション「スモールビジネスを、世界の主役に。」を達成するのであれば、当たり前のように銀行に振り込みに行っているようなお客様や、手続きのためだけに通勤しなければならないお客様に、潜在的な課題に気付いていただくマーケティングをしていかないといけない。ここに十分なリソースを振り分けられていないのではないかと感じています。