シニア世代:未知のものへのハードルを一緒に乗り越える
国内外を問わず、金融業界ではオンライン取引が主流になりつつあります。新型コロナウイルス感染症の影響で、この流れはさらに加速していくことでしょう。この状況下で取り残されてしまいがちなのが、デジタル環境になじみの薄い高齢者です。総務省の情報通信白書によると、2018年のインターネット利用率は13~59歳で90%を超えているのに対し、60~69歳では76.6%、70~79歳では51.0%、80歳以上に至っては21.5%となっています。この結果から、高齢者はデジタルに対するハードルが未だ高いという現状が見えてきます。
この課題に対し、コンテンツで解決を図っているのが、先ほども紹介した「Barclays」です。同社は「Digital Eagles」というプログラムを立ち上げ、デジタルに関する教育コンテンツを無料で配信しています。同社のホームページでは、高齢男性がビデオ通話でさまざまな人とつながり、応援しているサッカーチームの観戦を一緒に楽しむ動画が公開されています。

サッカー観戦を楽しんでいる様子を描いた動画。
動画の最後では「Barclays Digital Eaglesは
すべての人のデジタルスキルを向上させる手助けをします」と宣言している。
(Barclaysホームページより)
また、YouTubeの公式チャンネルでは「Passwords(パスワード)」「Social Media Misuse(ソーシャルメディアの悪用)」「Online shopping(オンラインショッピング)」などとテーマを決めた解説動画を配信しています。ノウハウだけでなく、オンライン上で気を付けるべきポイントについても解説しているのが親切です。
なお、動画という形式で配信しているのも、高齢者のことを考えた設計とみられます。ドイツの市場調査会社「Statista」によると、同社の本社がある英国で幅広い年代層で最も使用されているSNSはYouTubeとのこと。実は日本においても、60代で最も使用されているSNSはYouTubeなのです(総務省の情報通信白書より)。

デジタルに関する教育コンテンツが用意されている
このように、デジタルになじみのない高齢者に寄り添い、配信方法を工夫したコンテンツによって、オンライン取引に移行してもらうのにハードルとなっている要素を取り除いています。これは金融業界に限らず、どのような業界でもお手本となる事例です。ペルソナが自社サービスを利用するために「そもそも」ハードルとなっている部分はないか、考えてみましょう。
すべてのコンテンツの出発点はペルソナ
本記事では「年代・世代」に着目し、ライフステージに応じたコンテンツの事例についてご紹介しました。今回は話をわかりやすくするために、あえて一つの要素に焦点を当てましたが、ペルソナ設定には様々な要素が絡んできます。
そしてどの業界においても大切なのは「ペルソナの困っていることや関心のあることに寄り添う」ということです。コンテンツを考える際は、時に内容や手法ありきになり、「ペルソナ視点」が抜け落ちてしまうことがありますが、どんなコンテンツであれ、出発点はペルソナです。次回は「ブランディング」をテーマに、食品・飲料メーカーの事例を中心に取り上げます。