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ポストCookieの世界~アドテク最新事情をキャッチアップ

Cookie規制は目前、政府はどんな議論を?経産省に聞くプライバシー保護・データ活用両立への道筋


 RTB House高橋氏が、ポストCookieの世界とアドテクの技術革新を紐解いていく本連載。第3回は経済産業省を取材した。プライバシー保護とデータ利活用の両面を推進していくために、政府では現在どのようなことが議論されているのか。デジタル領域の競争政策・透明性確保への対応は。今年6月に成立した改正個人情報保護法のポイントとともにうかがった。

イノベーション促進の観点からみた、内定辞退率予測問題の本質

高橋:本日は経済産業省の村瀬さんにお話をうかがいます。村瀬さんはこれまで、個人情報保護やデジタル市場の発展など、デジタルマーケティングにも関係の深い業務をご担当されてきたとうかがっています。

村瀬:はい。現在はデジタル取引環境整備室で、デジタル市場の健全な発展をミッションに仕事をしています。主要な業務として、今国会で成立した「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」の施行に向けた準備などを行っており、他にもプライバシーの保護とデータの利活用の両面を推進する取り組みなども行っています。

経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 デジタル取引環境整備室 室長補佐 村瀬 光氏
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課
デジタル取引環境整備室 室長補佐 村瀬 光氏

高橋:保護と利活用のバランスは、まさにデジタルマーケティング業界の大きな関心事です。昨年、個人情報に関する大きな問題として、リクルート社の内定辞退率予測問題がありました。サービス内容だけでなく、Cookieの活用手法の是非が問われましたよね。この件のインパクトは大きく、データ活用に尻込みしてしまう事業者もいるのかなと思っています。イノベーションを推進するという観点から、この件の何が問題だったのか、どのように対策をしていればよかったのか、お話いただけますか。

村瀬:個人情報保護法に照らした違反内容については、個人情報保護委員会が指導・勧告した内容(昨年8月昨年12月)が公開されていますが、直接の違反事項以外にも、事業者にとって重要な論点が2つあると考えています。

 ひとつはデータの活用に当たってユーザー本人による関与をどのように確保するかという点。本件については、たとえ利用目的を伝えていたとしても、本人からすると「そこまでされているとは思わなかった」という本人不在の状態での利用だったのではないでしょうか。もうひとつは、本人が提供を望まなかったかもしれないデータ項目を推測して付加する行為、いわゆるプロファイリングは、どこまで許容されるのかという点です。

高橋:これらの観点が「社会的には受け入れられない」と判断されたからこそ、議論を呼んだのですね。

村瀬:はい。本件のように、複雑化が進むデジタル領域では、単に法令を遵守しているだけではリスクを避けきれない可能性があります。問題の本質は、新しい事業を行う前に、法的観点、社会規範上のリスクを検討・評価する体制が整備できていなかったことではないかと考えています。これは私たち行政も取り組むべき課題です。

競争・透明性の確保をどうするか

高橋:データの利活用については、サードパーティCookieの流通が難しくなりつつあるなど、個人情報の保護を進める過程で一事業者によるデータの独占問題が顕在化してきたように思います。御省では現状をどのように捉えていますか。

RTB House Japan株式会社 Head of Sales 高橋君成氏
RTB House Japan株式会社 Head of Sales 高橋君成氏

村瀬:おっしゃる通り、競争政策といった観点で検討すべき課題があります。

 たとえばサードパーティCookieの制限については、元々ファーストパーティデータを有しているプラットフォーマーがデータを外部に提供しなくなることで、市場の支配力が高まっていくのではないかと言われていますよね。そのようなプラットフォーマーとそれらを利用している立場にある事業者や広告主、パブリッシャーとの間での取引が不透明になったり、取引関係の優越性がでてきたり、ということも懸念されます。

高橋:なるほど。具体的な対応は行われているのでしょうか。

村瀬:デジタルマーケティング領域については、内閣官房に設置されたデジタル市場競争会議で議論が進められており、今年6月にデジタル広告市場の競争評価に関する中間報告が公表されました。今後目指すべき方向性のひとつとして、デジタル広告市場の健全な発展を図る観点から、「公正性」を確保すること、「透明性」の向上を図ること、それにより⼀般消費者を含めた各市場関係者の「選択の可能性」を確保することの3つを重要な要素としていくことが挙げられています。

 同時に、この領域の変化のスピードに鑑み、イノベーションを過度に阻害せず、イノベーションによって様々な課題を解決できるような仕組みを、政府が用意していく必要があるという方針が示されています。

高橋:ありがとうございます。次に、今年6月に改正された個人情報保護法について、私たちデジタル領域の事業者や広告主が注目すべきポイントをおうかがいしたいと思います。

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この記事の著者

高橋 君成(タカハシ キミナリ)

Cosmose Inc, Head of Sales&Partnership, Japan 1988年生まれ。外国語大学卒業後、リクルート、Criteoなどを経て、RTB Houseの日本法人立ち上げを経験。2021年4月よりCosmose Incの日本ビジネスにおける責任者を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/22 18:49 https://markezine.jp/article/detail/34491

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