企業コミュニティで得たデータを活用する作法
水野:企業が運営するコミュニティでは、様々なデータが集まってきます。昨今、データ活用を取り巻く環境は大きく変化していますが、企業側はどんな視点をもっておくべきでしょうか。
姫田:企業コミュニティが活性化するほど、ユーザーのファーストパーティデータが集まってきます。昨今、ターゲティング広告に利用されていたCookieへの規制も強まり、その代替手段としてコミュニティに着目する企業もいらっしゃるでしょう。
ただ、なぜそのような規制の動きが強まっているのか、その背景を理解したうえで、企業はデータの活用方法や目的に向き合う必要があります。コミュニティを通して、ユーザーから提供していただいたデータやリアルな声を、製品やサービスの改良に活かし、その成果を会員への価値として還元することが求められます。ユーザーから預かったデータの活用目的が、クロスセルなどの企業視点に偏っていては、せっかくコミュニティで築いた顧客と企業の信頼関係も崩れてしまうでしょう。
水野:その通りですね。企業側も決してデータをかすめ取るようなスタンスであってはいけないと思います。目的をもってデータを取得し、その使った結果をよりよい製品やサービスとして、お客様に還元していることを報告することは重要ですね。

企業コミュニティの近未来
水野:この2~3年で企業コミュニティはどう進化していくのでしょうか?
姫田:企業コミュニティを通じた“特別な体験”の提供は、今後も増えていくと思います。また、オンライン活用による地理的・時間的な制約からの解放で、お客様が参加して、何かを創り上げる“共創”の事例も多様化すると思います。
先日、味の素AGFさんの取り組みで、コロナ禍にAGF Lounge内のコミュニティ「ミライLABO」のママ会員の声から開発された商品が、11月に発売されました。今後は、消費者の関心領域や企業側の課題にあわせて、コミュニティのスタイルも柔軟に最適化する方向に進化していくと考えています。

水野:BtoBの領域では?
姫野:BtoB領域でも、コミュニティ活用は加速すると思います。対面営業が減少し、オンライン商談が主流となりつつありますが、コロナが終息したあとも、この状態は戻らないと思います。前述のコミュニティ活用のメリットを活かしてオンラインで効率的に対顧客や顧客間のコミュニケーションの場を作りだし、商談や顧客相互の問題解決をサポートし、リアルな場とも連携する、そんな営業プロセスが作り出せるのではないでしょうか。
水野:ますます取り組みは増えていきそうですね。本日はありがとうございました。
対談後記
企業は「一期一会」のマーケティングから「深く、継続的」なマーケティングへ軸足をシフトしていることがうかがえます。そのような背景から、企業コミュニティを再評価し、取り組む企業が増加しているのは自然な流れのように感じます。次回は、森永製菓のコミュニティを運営している企業側の担当者へ、運営のねらいや得られるメリットについてお話をうかがいます。