花王はMMMで動画広告の伸びしろを見つけ、売上UPに
ここまでの話を総括すると、他媒体に比べてROIの中央値が高く、比較的安定して1円以上を維持するデジタルメディアは、まだまだ投資の伸びしろがあり、不透明な時代のメディアプランニングに重要な役割を果たす選択肢の1つである。
あわせて、ブランドのデジタルへのメディア予算配分率とトータルメディア(全プラットフォーム統合)ROI指数の関連性を見ると、「デジタル広告の投資の割合が高いブランドほど、トータルメディアROIが高いことがわかる」と逢坂氏は指摘。
では、デジタルキャンペーンを拡大するなら、どのように活用することが最適か。逢坂氏は、MMMの分析結果から、「Facebook施策の継続活用がFacebookのROIの向上につながり、売上に貢献している」と言及。実際にFacebookのROI中央値の違いを見ると、Facebook施策の実施週数が26週未満と26週以上では、結果に31%もの差が出ている。
また、以前MMMを実施した花王からは、「検証によって、動画広告より静止画広告に成果があるという結果と、飽和カーブに基づいた適正なレンジがわかり、動画広告の伸びしろを発見した」とフィードバックが寄せられている。前述したとおり、MMMでは違う施策間の相乗効果を可視化できる。花王の調査では、静止画広告とInstagram動画と同時に配信したときの売上リフトは7.07%に達したという結果が出ているそうだ。
媒体の強みを活かすには、適正範囲の出稿量が必要
ここまで、企業が抱える消費行動の変化と広告費の課題に対し、ROIベースの評価ができるMMMの利点が挙げられた。また、各媒体にはROIを最大化する適正な出稿額の範囲があり、媒体間での相乗効果も見込めることも示された。では、なぜFacebook/InstagramのROIは高いのだろうか。倉迫氏がその問いに答えた。
Facebook社が提供する広告プラットフォームのROIが高い理由は、、次の2つ。1つ目は、Facebook/Instagramのターゲティング精度が優れている点。テレビのオンターゲット率が33%に対して、Facebook/Instagramは85%と、届けたいセグメントに対してのアプローチが正しく行えるため、効率が良い。
そして2つ目が、フリークエンシーの上限設定だ。ターゲティング精度が高い分、1人に対しての露出量をコントロールできるため、より効率的にムダのない配信ができるのだ。
これらFacebook/Instagramの強みを最大限に引き出すには、適正範囲の出稿量が重要になる。これは、出稿額の増加だけに留まらない。配信枠を増やし、その枠に適したクリエイティブを設計することも求められる。特に動画は、モバイルファーストのクリエイティブが不可欠だ。さらに、広告主が持つ各種顧客データをFacebookの広告運用に活用することで、より本来のKPIに近い設計の広告配信が実現する。
また、Instagramではブランドだけでなく、一般利用者やインフルエンサーも有力な発信元となる。 倉迫氏は、「第三者配信のインフルエンサーマーケティングを起用したブランドコンテンツ広告がおすすめ」と話す。ジェラートファクトリーの事例を挙げ、「ROASが20%改善、1件当たりの購入獲得単価も29%改善された」とその効果を明かした。
「消費者行動の変化が起きている中でも、継続的な広告出稿は将来の売上向上につながります。マーケティング予算が削減される中、ROIベースで評価できるMMM計測を継続的に行い、効率性の高まるメディアプランニングへつなげることが大切です。その上で、Facebook/Instagramは非常に貢献できるメディアです。引き続き、お客様のROIを高めるご支援を強化していきます」(倉迫氏)
倉迫氏は「Facebook/Instagramを最大限活用するため、適正範囲の出稿量とキャンペーン期間をぜひ検討してほしいです」とまとめ、ウェビナーを締めくくった。
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