企業に求められるのは、コミュニティ攻略と余白を生むサービス設計
すべてのサービスがデジタルに置換されるわけではないことが明らかになった。では、どこまでがデジタルでどこからがリアルなのか? その境界線を見極め、サービスの提供価値をしっかりと見直すためのヒントは、コミュニティ攻略にあるという。

これまでの王道は通用しない。大多数の意見をもとに作り上げられたマスメディアのメインストリームは機能しなくなり、その周辺にあったサブカルチャーがデジタルネイティブの嗜好を反映した複数のコミュニティに変化している。乱立するこのコミュニティを起点としたアプローチが突破口となる。

メッセージを伝える時は、複数のコミュニティを意識し、コミュニティごとに文脈を作って展開する。さらに、1つのコミュニティに限っては、L字型の情報拡散が有効である。コミュニティはコアな人物を中心として、コミュニティにかける熱量や発話量、影響力によってグラデーションが生じている。ブランドやメディアの直接的な情報発信よりもコアな人物の解釈付き情報発信のほうが浸透力の高いケースも多く、まずは、コアな人物に情報を落とし、そこから周りの層に浸透させていく手法がL字型拡散である。
ここで重要になってくるのは、情報に余白を持たせるということ。企業が発信した文脈は、受け取り側によって対応が異なるため、メッセージの解釈を受け取り側にある程度ゆだねる“余白設計”がポイントになる。網羅的かつ正確無比な情報よりも、個々が+αでアレンジする余地がある状態や、解釈によって建設的な議論が生まれる余白を残し、コミュニティ全体としての再解釈のループを作ることが結果的に情報浸透と広がりをもたらす。こうした考えが、デジタルネイティブ世代に向けた情報設計のベースとなる。
サービス作りも最後までコミュニティ型に〜本音と本気の開発体制
では、新しいブランドやサービスを作る際のポイントはどこにあるのだろうか?
ブランド形成やサービス作りも、やはりコミュニティ型になってきている。これまでも、ターゲットから直接意見をヒアリングして商品開発につなげるケースはあったものの、実際の開発段階になると企業内メンバーだけになり、ここで当初のエッセンスが失われて、いわゆる“大人の解釈”が注入されてしまっていた。一般的に使われている「共創」のキーワードも、アイデア創発のみに閉じてしまっているケースも多い。
ターゲットの意見・行動に潜むインサイトを一緒に紐解き、開発アイデアのブラッシュアップ、さらにはUI/UXまで一緒に取り組むなど、サービス作りの全工程をターゲット層と一緒に作り上げるコミュニティ型の開発体制をおすすめしたい。

佐々木氏は、「デジタルネイティブ世代はボリュームも少なく、キャッシュ総量も多くはないが、LTV(Life Time Value)視点において、影響力のある世代である」と解説しつつ、「デジタルネイティブ世代に有効なコミュニティ型の情報拡散やサービス作りは、今後より上の世代にも波及し、未来には“あたり前”の手法になるはずである」と締めくくった。