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強者だけが生き残る「淘汰期」へ 米国におけるD2C最新トレンド

 小売の流通経路を利用せず、商品を消費者に直接ECで販売するD2C。過去10年でD2Cが急成長した米国では既に伸びが鈍化し、ユニークな特徴を備えた強者が生き残る淘汰期に入った。米国の「D2C2.0」から、日本の小売業界は何が学べるのだろうか。

※本記事は、2021年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』62号に掲載したものです。

売上を年々拡大する米D2C市場

在米ジャーナリスト 岩田太郎氏
京都市出身の在米ジャーナリスト。米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の訓練を受ける。現在、米国の経済・司法・政治・社会を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』誌などの紙媒体に発表する一方、Webメディアにも進出中。昭和38年生まれ。

 調査企業eMarketerは2020年3月に、「米国におけるD2C売上は、2019年に142億8,000万ドル(約1兆4,824億円)に達した」と発表した。2020年はこれを24.3%上回る177億5,000万ドル(約1兆8,427億円)、2021年は前年比19.2%増の211億5,000万ドル(約2兆1,956億円)と、初の200億ドル超えが予想されている。

 米EC売上においては2020年に王者アマゾンが全体の38.7%のシェアを押さえているが、D2Cの急成長に便乗する形でアパレルや日用品を中心に80以上のプライベートブランド(PB)を自社開発し、ユーザーに直接販売している。アマゾンの参入は、さらにD2Cの有望性に対する期待を高めている。アマゾンのECライバルである小売世界最大手のウォルマートもD2Cを始めた。小売大手のターゲットも生活用品のP&Gとのコラボレーションで、プレミアム絆創膏のウェリーをD2Cで販売し、好評だ。

 また、ジーンズのリーバイ・ストラウス、スポーツウェアのナイキやアディダスも相次いでD2Cに参入し、新製品やカスタムフィットのプロダクトを提供している。

 こうした中、D2Cブランドの数は400を超え、引き続き年率20%前後の成長を維持する勢いのある分野だ。新型コロナウイルスの流行により、店舗型小売業者の80%が売上の落ち込みに見舞われる中、D2Cブランド企業の52%は逆に売上が伸びたと、ECプラットフォームプロバイダーのKooomoは報告している。

伸びは鈍化し“淘汰期”に突入

 しかし、EC内の競争が激化する中、D2C全体の売上の伸びは急速にペースが落ちてきていることも事実だ。eMarketerによれば、2017年は前年比69.8%という驚異的な成長を誇っていたものが、2018年には56.5%、2019年には33.1%と急減速している。

 同社のアンドリュー・リプスマン首席アナリストは、「D2Cブランドは製品イノベーションやモダンなブランド体験の提供で時代の先端を走っており、急成長を可能とする巨額の投資を引き寄せることができた」と総括した上で、「この分野における過去数年間の顕著な拡大にもかかわらず、企業買収コストの増大や資金調達の困難さ、収益度外視に代わる利潤追求などにより、成長の伸び率は鈍化している」と解説。

 引き続き高成長が見込めるD2Cだが、厳しい現実と向き合う「淘汰の時期」に差し掛かっていると言える。米オンラインメディアのクォーツは現状を評して、「マットレスD2Cブランドのキャスパーは投資家にとり、評価額が10億ドル以上のスタートアップであるユニコーン企業だったが、株式新規公開(IPO)後は株価が低迷している」と伝えた。同じくユニコーン企業の化粧品ブランドであるグロシエも、D2C向けに立ち上げたカラー化粧品のPlayから撤退するなど、一時期の熱狂は後退している。

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この記事の著者

岩田 太郎(イワタ タロウ)

京都市出身の在米ジャーナリスト。米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の訓練を受ける。現在、米国の経済・司法・政治・社会を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』誌などの紙媒体に発表する一方、Webメディアにも進出中。昭和38年生まれ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/25 09:30 https://markezine.jp/article/detail/35305

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