消費者目線のカテゴリー定義は一筋縄ではいかない
購買サイクルの違いに応じて自社のカテゴリーの特性を理解したら、次に知るべきことは、二つ目の手がかりとして挙げた「消費者にとってのカテゴリー定義の理解」である。ターゲットとなる消費者がどのようにカテゴリーを定義しているか、ということになる。
そのカテゴリーのブランドを使うこと・買うことによって達成したいこととはなんなのか、カテゴリーは何をしてくれるものと認識しているのか。言い換えれば、そのカテゴリーで何を重視しているのか、何を期待しているのか、また新たに期待される可能性を秘めていることは何なのかということである。
たとえば洗濯洗剤カテゴリーだと、「汚れを洗い流すこと」を重視しているが、良い香りがすることを期待しているユーザーもいれば、環境に良いことを期待しているユーザーもいる。しかしながら、重視している「汚れを洗い流すこと」を外すと、そもそも重視していることがなくなるので、見向きもされなくなる。要は必要条件と十分条件のようなもので、カテゴリーから離れすぎるとそのブランドそのものを必要ではなくなる可能性が高いが、現状のカテゴリーに重視することだけでは新たなビジネスを生む事ができないので、ユーザーを起点としてカテゴリーを理解することで、ユーザーが重視する点をキープしつつ、ユーザーの期待を時に裏切ったり、上回ったりするなどして、新たにビジネスを作ることが必要となる。
これはユーザーのカテゴリーへの関与度を理解することであり、そのためには、まさに消費者の無意識を理解することが重要になる。このためには「なぜ?」を繰り返していく方法が有効だ。
たとえばアドビの場合であれば、
Photoshopなどのクリエイティブツールをなぜ使いたいと思うのか? 自己表現がしたい? なぜ? かっこいいと思われたいから? なぜ? 誰かに見せたい/見てもらいたいから? なぜ?(続く)
このように、たとえば「なぜ?」という問いを数回繰り返して、自社が独自性のあるアクションを起こせるレベルまで深掘っていく。ほかにも第1回で簡単に触れたビジュアルを使った方法など、様々な手法が存在している。このように、無意識に消費者の中にある(1)カテゴリーに対する期待、(2)カテゴリーそのものに求めていること、(3)カテゴリーを超えて達成したいことを最低限理解しておくことが、次回取り扱う「ブランドの再定義」に必要になる。
なお、消費者にとってのカテゴリーの定義も、購買サイクルが長いのか短いのかで大きく変わる。なぜなら、さまざまなモーメントで達成したいことやカテゴリーへの関与度が変わる可能性が高くなるからである。

たとえば家を買う時に、ただ単に自分の希望や夢だけ考えるだろうか? 家族のことや将来のこと、子供の人数なども考えるだろう。検討期間が長い分、自分が家に期待していることを整理するのも時間がかかる。
銀行や保険など時期によって買い換える可能性があるものはより顕著で、自分が置かれた状況やライフステージで変化する、一筋縄ではいかないカテゴリーの定義が存在している。いかにそれらの定義を長い期間で捉えているか、また変化する瞬間やフェーズに合わせてパーソナライズしたコンテンツでアプローチできるかが重要であり、昨今はオンラインと繋がっていることで、リサーチなどをともなわずともより理解を深めるヒント(データ)はすでにあることが多い。また、検討期間が長ければ長いほど、その人の重視する点や関与度が変わる可能性を秘めているが、それらを理解し、モーメントに合わせてアプローチできるのがまさにオンラインやデジタルの強みであり、購買サイクルが長いほどその影響力は増すのである。